過去10年の国政選挙を振り返ると、与野党の勝敗と日経平均株価に一定の関連が見て取れる。株価が上り調子の時は与党が快勝し、そうでない時は苦戦するという傾向だ。岸田文雄内閣の支持率が堅調なため、今回の参院選は与党有利との観測もあるが、足元の株価は下落基調で、波乱の予感を漂わせている。

 2012年以降に7回あった衆参選挙の結果と株価の関係を分析した。投開票日直前の営業日終値が1カ月前より1000円以上高かった「上昇局面」は12、17年衆院選、13年参院選の計3回。うち政権交代選挙となった12年では自公両党が議席比率を09年の前回衆院選比39ポイントも増やして68%に高めた。政権交代の熱気が残っていた13年も10年の前回参院選比13ポイント増の63%の議席を得た。17年衆院選では1ポイント減らしたものの、当時は森友・加計学園問題などで安倍晋三内閣の支持率が低迷していた。逆風下の割に踏みとどまったとも言える。

 一方、1カ月前と比べ1000円以上下がった「下落局面」で投開票日を迎えたのは16年参院選だ。英国の欧州連合(EU)離脱決定で世界的な株安の連鎖に陥っていた。政府は中小企業対策などを急いだが、自公は13年の前回選に比べ6ポイント減の57%だった。

 株価の変動幅が1000円未満だった「踊り場局面」の選挙は14、21年衆院選と19年参院選の3回あった。14年と19年の議席数はそれぞれほぼ横ばいを維持したが、21年衆院選は17年の前回選比4ポイント減の63%だった。踊り場では与党は現状維持が精いっぱいの状況だ。

 株価は「景気の先行きを映す鏡」とも呼ばれる。暮らしぶりが今後良くなると期待できる時は「政治の安定」を求めて与党に支持が集まり、そうでない時は逆の結果に向かいやすい。

 こうした傾向を意識して、14年衆院選、16年参院選の投開票約1カ月前に安倍首相(当時)が消費税率引き上げ先送りを表明するなど、歴代首相は選挙前に景気刺激策を打ち出してきた。岸田首相も、有権者に投資を促す「資産所得倍増プラン」など株価重視の政策に取り組んでいる。

 しかし21年10月の岸田内閣発足以降、株価は2000円以上下げている。新型コロナウイルスの感染収束への期待感で一時3万円の大台を突破した菅義偉内閣時代からの反動局面を脱しきれていない。週末の6月17日には終値で前週末比1861円も急落するなど、最近は下げの勢いが強まりつつある。16年以来の「下落局面」で7月10日の投開票を迎える可能性もあり、株価の行方に注目が集まりそうだ。【藤渕志保】

毎日新聞 2022/6/22 03:00(最終更新 6/22 07:30) 1070文字
https://mainichi.jp/articles/20220621/k00/00m/010/210000c