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大崎事件の第4次再審請求棄却を受け「不当決定」と掲げる弁護士=鹿児島市の鹿児島地裁前で2022年6月22日午前10時1分、平塚雄太撮影

またもや開かなかった「重い扉」 大崎事件、再審請求棄却の是非は
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 鹿児島県大崎町で1979年に男性(当時42歳)の遺体が見つかった「大崎事件」で、鹿児島地裁は22日、殺人罪などで懲役10年が確定し服役した原口アヤ子さん(95)の第4次再審請求を棄却する決定をした。原口さんは第3次請求審までに、一つの事件で「異例」となる3度の再審開始判断を勝ち取ってきたが、上級審で覆されてきた。第4次請求審で弁護側は「男性は事故死だった」とする新証拠を提出したが、中田幹人(まさと)裁判長は「窒息死の認定に合理的疑いを生じさせるとはいえない」と退けた。

 弁護側は福岡高裁宮崎支部に即時抗告する方針。

 第4次請求審で弁護側は新たに提出した救命救急医の鑑定などに基づき、男性の死因について、事故で頸髄(けいずい)を損傷して運動機能障害に陥った影響などで腸管が壊死(えし)し、大量出血死したと主張。死亡時期についても、男性を自宅に運んだ住民2人が、首を保護せずに軽トラックの荷台に乗せたため頸髄損傷が急速に悪化し、自宅到着時には既に亡くなっていたと訴えた。

 決定は、男性の遺体が牛小屋の堆肥(たいひ)内に遺棄され、腐敗が進んでいたことを重視。解剖時の腸管の写真などを基にした弁護側の鑑定を「1枚の写真から得た限定的な情報に基づく推論で、結論を導いている」などと問題視し、大量出血死とは認められないとした。第3次請求審で1、2審の再審開始判断を取り消した最高裁が、解剖写真に基づく鑑定を疑問視した点も考慮したとみられる。

 一方、住民2人の救助が頸髄損傷を悪化させたとする弁護側の主張について、決定は「可能性が否定できないという限度で証明力はある」と認めた。ただ、2人は「(男性は)荷台から降ろされた後に1人で立てた」などと供述していた。

 これについて決定は、2人の供述の信用性について、記憶違い等による食い違いが一部であっても「核心部分は揺らがない」と判断。弁護側は「供述内容が信用できない」とする鑑定も提出していたが、決定は手法などに問題があるとして「証明力を減殺するものとはいえない」と断じた。

 弁護側は「男性の死亡に気づいた2人が牛小屋に遺棄した」とも主張していたが、決定は「極めて不自然だ」と批判。弁護側の新証拠について「確定判決の判断に動揺を生じさせるとはいえない」として退けた。

 地裁は原口さんの元夫(故人)の再審開始も認めなかった。鹿児島地検の桑田裕将(ひろゆき)次席検事は「結論において適切な判断をされた」とのコメントを出した。【宗岡敬介、平塚雄太】

 ◇弁護団「これからも闘い続ける」

 裁判をやり直す「重い扉」は、またもや開かなかった。大崎事件の第4次再審請求を棄却した22日の鹿児島地裁決定。「あたいはやっちょらん」。無罪を43年間訴え続けた原口アヤ子さん(95)の無念を思い、支援者の誰もが憤った。

 午前10時、地裁前に集まった支援者を前に「不当決定」と書かれた垂れ幕が掲げられると「ふざけるな」と怒号が飛んだ。原口さんはこれまで3度の再審開始判断を勝ち取ってきただけに、落胆の空気が広まった。

 支援者の武田佐俊(さとし)さん(79)=宮崎県串間市=は、認知症の進む原口さんが入院する鹿児島県内の医療機関を訪れ、決定内容を伝えた。「不当決定」と書かれた紙を見せ「ムチ打つような決定になってしまった」などと声をかけると、原口さんは上半身を起こすような仕草をして、眉間(みけん)にしわを寄せながら何度もうなずいたという。

 原口さんの代わりに第4次再審請求をした長女の京子さん(67)は鹿児島市内で記者会見し「本当に残念で悔しくてたまらない」と声を詰まらせた。再審開始を信じ、決定を心待ちにしていただけに「本当にしていないんです。それだけを分かってほしい」と改めて母の無実を訴えた。

 会見に同席した弁護団の鴨志田祐美事務局長は、地裁で決定文が交付された際、信じられずにしばらく動けなかったという。「弱い人たちの声を拾い上げて救うのが司法。そういう思いはなかったのか」と憤った。原口さんを支援してきた映画監督の周防正行さん(65)も会見に参加し「ここで屈してはいけない」と強調、森雅美弁護団長も「これからも闘い続ける」と決意を新たにしていた。

 第3次請求審で最高裁は19年、再審開始を認めていた1、2審の決定を取り消していた。…
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