ドイツで開催のG7サミットで、ロシアの金禁輸をはじめとする日本の対露制限措置の新パッケージが発表された。英国、カナダ、米国も禁止措置に参加する。金禁輸にドイツやフランスといった欧州の「重鎮」とすでに深刻な経済損失を被っているイタリアが加わっていないことは注目に値する。

スプートニクは、日本が、エネルギー安全保障が欧州以上に脆弱であるにもかかわらず、今回反露制裁の先陣を切る(今のところアングロサクソン世界のみとの同盟で)理由を調べた。

■リスクは最小限度か?

日本研究と国際関係が専門のモスクワ国際関係大学、東洋学部のドミトリー・ストレリツォフ学部長は次のように指摘している。


「金は、エネルギー資源、非鉄金属、レアメタルなど、戦略的に重要な物に比べて露日貿易収支ではさほど大きな位置を占めていない。このため日本が突き付けたロシア産金の禁輸制裁はシンボリックな意味合いを持っていると言っていい。日本はロシアが外貨準備の大部分を奪われていると考えているため、金を禁輸すれば、ロシアが国家予算の追加的な収入を得るための取引の機会を奪うことができるとを期待している」


そうはいってもロシアの金に対する制裁は、燃料の輸入制限と同様の効果をもたらすため、世界のインフレ率をさらに押し上げるだろう。 グローバルタイムズ紙は、金禁輸がロシア経済そのものに与える直接的な影響は限定的と報じている。

■有権者の感情の「トレンド」にのる首相

ストレリツォフ氏は日本の今の「活発な制裁モード」には2つの明確な理由があると指摘する。


「日本では7月に参議院選挙があるため、岸田首相は自分の外交政策が一定の成果を上げていることを示す必要がある。だが経済は長い間成長しておらず、有権者に『自慢』できることは何もない。つまり国内は決して順風満帆ではないが、岸田首相は対露制裁を再び強化し、ロシアを『蹴っとば』したところで何のリスクも冒さない。ウクライナの一件で国内の反ロシア感情は最高潮に達しており、日本人の90%以上が反ロシアであり、野党の反露姿勢はさらに強い。ここで岸田氏は、自分が親露的な感情を持っているとして野党が(理論的にも)自分を非難できないように、世界の首脳らと同等であることを示し、イニシアチブを握らなければならないのだ」


だからこそ岸田首相は世界秩序の維持で西側諸国の尽力に同調し、自国が反露路線で世界の流行の波に乗っているところをアピールしたわけだ。


「われわれは歴史の岐路に立っている。ルールに基づく国際秩序を維持できるかどうかが問われている。国連の安保理などの枠組みが十分対応できていない」


一方で帝国データバンクの実施した調査ではロシアで開設していた日本企業168社のうち、ウクライナでの特殊軍事作戦開始後、露市場からの完全撤退を決めたのはわずか4社であることが明らかになった。

つまり日本の実業界はこの「歴史の岐路」に全く快適な思いをしているわけではなく、大きな損失を覚悟でロシア市場との別れを急いでもいない。 それは少なくとも、先送り状態になっている。

日本企業はおそらく、紛争を長引かせ制裁を強化するよりも、ウクライナの状況がロシアと交渉する形で改善されるのを待っているのだろう。

※以下省略。記事全文はソース元にて


2022年7月3日, 06:58
https://jp.sputniknews.com/20220703/--11809471.html