岸田自民の大勝に終わった参院選から一夜明けた11日、凶弾に倒れた安倍元首相の通夜が都内で行われた。
自民党議員は皆、沈鬱な表情を浮かべていたが、安倍元首相亡き後の「安倍派」では、早くも“跡目”争いが勃発しているという。
最大の問題は、衆目が一致する“安倍後継”が一人もいないことだ。

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 いち早く動いたのは、派閥事務総長の西村康稔前コロナ担当相だった。

「西村さんの呼びかけで11日の昼、派閥の幹部会合が開催されました。出席者は塩谷立と下村博文の両会長代理、それに参院派閥の世耕弘成会長の4人だったそうです。
参院選で当選した新人を含めると、現在93人の安倍派(清和会)は100人規模になる可能性がある。
会合を呼びかけた西村さんは、下村さんと組んで最大派閥の主導権を握ろうとしたのではないか、そう見られています。
ミソは、ライバルである萩生田経産相を外したこと。派閥の役職に就いていない萩生田さんを会合に呼ばずに“萩生田不在”の中で今後の体制を決めてしまいたかったのかもしれません」(官邸事情通)

 ところが、この動きを察知した派閥重鎮が待ったをかけたという。「安倍さんの通夜も終わっていないのに、そんなことをしている場合か」といさめたとされている。

 結果、幹部会合は流れ、メンバーを拡大した会合を11日夕方に都内ホテルで改めて開催することになった。約20人が出席した。
日刊ゲンダイが会合終了後、複数の議員に話を聞くと「今後の派閥運営についての話はなかった」(衛藤征士郎元衆院副議長)という。

 しかし、8月下旬に内閣改造が予定されているため、急いで次期会長を決める必要がある。

「トップ不在では岸田首相と人事について交渉する窓口がなくなってしまいます。これまでは安倍さんが岸田首相と交渉を行っていた。
早期に会長を決めないと、交渉ができなくなってしまう恐れがあります」(自民党関係者)

■“集団指導体制”以降も分裂の危機

 いま浮上しているのが、西村氏や下村氏といった複数幹部による“集団指導体制”だ。だが、これも波乱含みだという。

「当面は集団指導体制でやっていけるだろうが、将来的に分裂は避けられないと思う。
24年の総裁選が近づけば、西村さんや下村さん、それに萩生田さんは、『オレが、オレが』と“総裁候補”として意欲を示し始めるだろう。
いったい派閥として誰を担ぐのか。誰が会長に就いても派内はまとまらず、分裂に向かう可能性がある。
そもそも、派内には安倍系と福田系が“同居”しており、分裂の流れができれば、つなぎ留めるのは難しい。
分裂したグループが、菅前首相のグループと合流するのでは、という見方もあるほどだ。
派閥オーナーだった森喜朗元首相が分裂回避のために動くはず、という話も伝わっている」(官邸事情通)

 安倍元首相の父で、清和会会長だった晋太郎氏はかつて、「派閥は大きければいいわけじゃない。維持するのが大変」と話していたという。
実際、安倍晋太郎氏が亡くなり、三塚博氏が会長に就いた後も、派閥は分裂している。最大派閥を巡るゴタゴタは混迷を極めそうだ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/a9aa618de207d636812af36ed6e89ba32602366b