Diamond オンライン2022.7.27 4:15
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● 校内の自販機で「メンズビオレ」を販売するしかけ
校内に設置された、青い不思議な自販機。

売られているのはメンズビオレをはじめとした、花王のビオレやニベアの製品です。何故学校にメンズビオレの自販機があるのか。きっかけは男子生徒からのこんな言葉でした。

「先生、○○って日焼け止め塗ってるんですよ」「○○は肌の手入れにすっげー意識高いんです」

遭遇したのは、そう言って仲間のスキンケアを冷やかす男子生徒たちの姿でした。私は思わず、「いや、男の子でも日焼け止めくらい塗るだろう」「男だってシミができると後で大変なんだよ」とたしなめましたが、その後、ハッと気がつきました。

現代っ子である高校生にも、根強いジェンダーバイアス(男女の役割に関する固定観念)があることを。

若い世代のジェンダーへの捉え方は確かに変わってきています。とはいえ、生徒の親御さんや私たちの大人世代は、まだまだ古い価値観を捨てきれていません。家庭や学校で大人が何気なく発した言葉や、テレビや漫画、ひいては今どきの若者の動画にさえも、ジェンダーバイアスは存在しています。

どうすれば彼らに古い価値観から脱却してもらえるだろうか。ジェンダーの授業や講演会をすることも大切だけれども、そういう一方通行の形ではなく、何か一石を投じたい。そう思いました。

● 日常生活の中でジェンダーバイアスをなくしていく
日常生活の中で、無意識のうちにジェンダーバイアスがなくなるような、そんな素晴らしいしかけはないだろうか。いろいろと考えを巡らせていたところ、「そうだ!」と思いついたのです。自分の肌を気にして冷やかされるくらいなら、むしろスキンケア商品を学校で買えるようにしてあげようじゃないか、と。

こうして、ビオレやニベアの製品の自販機が、学校の正門奥にある吹き抜けの広場スペースに設置されることになりました。もちろん、ここでメンズビオレも買えます。

結果、男子がものすごく買っていきました。あえてジェンダー教育をしなくても、日常風景の中にこのようなしかけを用意しておくことで、スキンケアに性別は関係ないんだ、「男子だから」「女子だから」という考え方は古いんだ、という認識が広がっていく。大袈裟かもしれませんが、こうした取り組みの積み重ねで、子どもたちのジェンダーバイアスがなくなっていけば良いと思っています。

● 食べたアイスのプラゴミが箸に生まれ変わるしかけ
また、ほかにもアイスの自販機を夏に設置しました。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための一斉休校の後、分散登校を経て、通常登校を再開した2020年7月のことです。

夏にマスクをしていると熱がこもり、通常よりも暑さを感じます。そんな時、「暑いからアイスの自販機があったら良いな」という生徒の声が、江崎グリコさんのセブンティーンアイスの自販機の設置に繋がりました。

「こんな時だからこそ、学校を楽しい場所にしてあげたい」という思いが強かったのはもちろんですが、単なるお楽しみでアイスの自販機を置いたわけではありません。

学校にアイスクリームの自販機を置いたら、生徒は喜んで買うでしょう。でも生徒がアイスを買えばこぼれるし、ゴミも出ます。「何か教育効果がないと、学校に置く意味がない」と、営業の方と何度も話し合いました。

話し合いの中で思いついたのが、「セブンティーンアイス」=17だから、「SDGs」と繋がるのではないかということ。SDGsとは「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことを言いますが、その中で17の目標を掲げています。やや無理矢理ではありますが、セブンティーンアイスをSDGsに絡めて、啓蒙活動の一環としてSDGsカラーのデコレーションを施した自販機を置けば面白いのではないか、ということを考えました。

残念ながら、国連からSDGsのマークの使用許可が下りず、「SDGs自販機」の実現は立ち消えとなりましたが、子どもたちへの教育効果を生み出したいという思いは変わらず、それならばと「アップサイクル」をテーマに動いていくことになりました。

● “学校”という小さな環境を強みに
アップサイクルとは、廃棄物や不要物を新しい製品にアップグレードさせること。アイスを食べた後に捨ててしまうプラスチックの棒が何かに生まれ変わって、子どもたちの手元に返ってくる仕組みを作ろうと考えました。

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