安倍元首相と旧統一教会とのつながりは国内のみならず、日本を「非宗教的な国」だと認識していた世界を驚かせた。
だが、日本の宗教を専門とするアメリカの研究者によれば、安倍派の政治家は神道の思想や価値観も政治利用してきたという。

安倍晋三元首相を狙撃した山上徹也容疑者は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に安倍が関係していたことが犯行の動機だった、
と警察で供述している。旧統一教会は、救世主信仰の新興宗教だ。

1954年に同教会を創設した文鮮明(ムン・ソンミョン)は、家族を救済して世界を平和にするため、イエス・キリストが自分をこの世に送り出したと主張した。
文は宗教活動の他、国際的なビジネスや保守系の反共産主義の政治活動にも関与しており、その信者は「ムーニーズ」とも呼ばれる。

安倍元首相と旧統一教会との政治的なつながりは、3世代前の祖父・岸信介までさかのぼり、父・安倍晋太郎と晋三に引き継がれた。
安倍は2021年、旧統一教会系の団体が開催した集会にビデオメッセージを送っている。

山上容疑者の動機は、日本を「非宗教的な国」だと考えていた多くの人々を驚かせた。
だが、日本の宗教を研究する私から言わせれば、安倍と保守系の与党・自民党は複数の宗教政党や、宗教的な伝統と関係がある。
だがどういうわけか、安倍と神道の深いつながりは、これまでほとんど報道されていない。

神道は安倍政権の一部だったし、いまでも自民党の一部だ。

(中略)

■神道を政治利用した安倍元首相
日本における神道の主要団体のひとつに「神道政治連盟(SAS)」がある。
SASは約8万の会員神社を統括する「神社本庁」の政治団体として1969年に設立された。

ニュージーランドのオークランド大学で日本の宗教を研究するマーク・マリンズによれば、
この国家主義団体は、天皇の権限の強化、憲法改正、神道に基づいた道徳教育の実施などを目標に掲げる。
また同団体は、日本の過去の軍国主義を象徴する場所として物議を醸す靖国神社への政府関係者の参拝を推奨している。
同神社には戦争犯罪人を含む戦没者や被植民者の魂が神道の神々として祀られる。

安倍政権は長期にわたり、SASと緊密に協力した。
2016年に発足した第三次安倍再改造内閣の閣僚20人のうち、19人がSASと関係があり、14人が「日本会議」の会員だった。
日本会議は「日本を守る会」などの神道団体とつながりのある右翼国家主義の団体で、安倍は特別顧問を務めていた。

安倍と彼の家族は政治活動の外でも、右翼的な宗教活動に関わっていた。
2017年には、超国家主義的な神道の小学校を開校しようとしていた学校法人「森友学園」をめぐる汚職事件に安倍夫妻が関与していたことが発覚。
同学園が国有地を小学校の建設地として購入した際、行政が巨額の値引きをしたことに疑問の目が向けられると、安倍夫妻は学園との関係を断ち、建設計画は頓挫した。

安倍は環境保護的な思想といった、神道の他の面も政治利用しようとした。
2016年、彼は天照大神が祀られる伊勢神宮の内宮にG7の首脳を招待し、植樹式をおこなった。
ノルウェーのオスロ大学で日本や沖縄文化を研究するアイケ・ロッツ准教授は、国家の公的な精神性として神道を推進し、その正当性を認めさせるために安倍がこの式典を利用した、と自著に書いている。

首相の在任期間中もその後も、保守派や国家主義者にとって、安倍晋三は神道政治の指導者であり、模範だった。彼の遺産はいまも生き続ける。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e3c6d240cd9d04b5d6543e669eb9cd9a8dcedb96?page=1