山縣章子

毎日新聞 2022/8/15 16:00(最終更新 8/15 16:00)

 慢性的な担い手不足が続く介護現場で、国はロボット技術の活用を進めようとしている。ただ、8割の事業所は導入していないとの調査結果もある。介護の現場は今、どこまで機械に頼ることができるのだろうか。

 ロボットと聞くと、自立して歩いたり、顔があって会話できたりする人型のロボットをイメージしがちだが、介護現場で広がりつつあるのはそれではない。「情報を察知し、判断して動く」という一連の機能を備えた介護向けの機械システム全般を指す。

 堺市の特別養護老人ホームは2019年、介護の見守りシステムを導入した。入居者の動きを見守るセンサーがあり、人の動きから転倒や転落の予兆を検知。職員が持つ端末に必要なサポートをするよう通知する。プライバシーを守るため、職員から見える画像はシルエットだ。

 導入後、職員が事故予防のために居室を夜間に巡回する頻度が減った。さらにシステムは、入居者ごとに危険な動作の特徴を見分けて通知することができる。職員には「夜勤の動きもスムーズになった」と好評だった。利用者側も、夜間に職員が居室に立ち入る機会が減り、「夜によく眠れるようになった」との声もあった。

 効果を踏まえ、当初より機器の台数を増やして入居者の状態に合わせた見守りに役立てている。施設長は「ベッドから起き上がっただけで居室に駆けつける必要がある人もいれば、そうでない人もいる。どう使えば個別の状況に対応できるかと、システムを活用するのに施設側の工夫が必要だ」と指摘する。
 https://mainichi.jp/articles/20220813/k00/00m/100/134000c