邪馬台国の有力候補地とされる纒向(まきむく)遺跡(奈良県桜井市)で出土していた古墳時代初頭の犬の骨を分析したところ、背中までの体高は約48センチで中型犬の大きさと推定されることが分かった。弥生時代までは小型犬が主流で、古墳時代になって大陸からもたらされた可能性を示すという。成果は桜井市纒向学研究センターの研究紀要に掲載された。

古代の犬は、小、中小、中、中大、大級に分類され、今回は中大級に該当するという。

犬は縄文時代から番犬や猟犬として飼われ、弥生時代には食用の家畜とする習慣が伝わったとされる。出土した骨には解体された痕跡はなく、溝の底からまとまった状態で見つかったことから、儀礼のために供えられた可能性があるという。

体高は大腿骨の長さから推定。古墳時代では蔀屋北(しとみやきた)遺跡(大阪府四條畷市)でも5世紀中ごろの中型犬の骨が出土している。

骨は桜井市教育委員会が2014年度に実施した調査で、遺跡中枢の大型建物群跡東側に位置する深さ約1メートルの溝底から出土した。ほぼ1体分の全身骨格とみられ、古墳時代初頭の3世紀前半のものと考えられるという。

纒向遺跡は3世紀初めごろ出現した巨大集落跡。卑弥呼の宮殿説のある大規模な建物跡や運河跡、九州から関東に至る各地の土器が見つかっており、初期ヤマト王権が築いた都との見方が強い。

分析した元大阪府立狭山池博物館学芸員の宮崎泰史さんは「朝鮮半島などから人と共に中型犬が渡来し、日本の犬の形質が変化した可能性がある」と話している。

2022年8月16日 11:50
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF158JA0V10C22A8000000/