<ロシアが住民投票で支配の既成事実化を図ろうとしているヘルソンで、ロシア軍の物資輸送の要衝であるアントノフスキー橋を破壊できれば、住民投票どころではなくなる可能性も>

ロシアが占領したウクライナ南部の都市ヘルソンでは、近郊のドニプロ川に架かる唯一の橋アントノフスキー橋が、アメリカがウクライナに供与した高機動ロケット砲システム(HIMARS=ハイマース)の攻撃で破壊された模様だ。イギリス国防省によれば、ロシア側はウクライナ南部の前線からヘルソンへの物資輸送を継続するため、この川に舟橋を架けようとしているところだった。
アントノフスキー橋はドニプロ川以西のロシア支配地域(特にヘルソン)に通じる最も重要な交差路にあたる。7月19日にウクライナのロケット弾による攻撃を受けて以来、少なくとも8度の攻撃を受けたため、ロシア軍はこの地域で大型軍事車両を動かすことができなくなっていた。
さらに8月22日には、アントノフスキー橋を修復して弾薬を運ぶロシア軍をウクライナ軍が攻撃し、橋が崩壊したという未確認情報もある。同日ソーシャルメディアに出回った橋の画像や動画には、現場から炎と大量の煙が立ち上る様子が写っている。

輸送の大動脈を攻撃
8月14日にアントノフスキー橋を攻撃したとき、ウクライナ南部防衛軍のナタリヤ・フメニウク報道官はその狙いをこう述べていた。「われわれは、占領された地域への輸送・物流の大動脈を目標とした砲撃準備を続けている。これは、占領者に(撤退という)正しい判断をうながすという明確な意図に基づく作戦だ」
橋が崩壊したかどうかは不明であり、メディアでは報じられていない。だがワシントンのシンクタンク戦争研究所(ISW)によれば、8月21日と22日の攻撃で、ドニプロ川とその支流に架かる道路橋は「大型輸送には使用できない」状態になった可能性が高い。

前線への重要な補給ルート
アントノフスキー橋は、ウクライナ南部を占領しているロシア軍部隊への補給路として戦略的に重要だ。
この橋がなければ、ヘルソンにいる部隊への補給は困難だ。ドニプロ川にはアントノフスキー鉄道橋とノバヤ・カホフカ・ダムの橋もあるが、ダムの橋もウクライナ側から砲撃を受けている」と、キングス・カレッジ・ロンドン防衛研究所のマリーナ・ミロン研究員は本誌に語った。
「ヘルソンでロシア連邦への加盟を問う住民投票を予定しているロシア政府にとって、この地域は兵站上だけでなく、政治的な意味でも重要だ。ロシア連邦への支持を得るためには、ロシア軍が領土の保持と住民の保護が確実にできていなければならない。ヘルソンに混乱を作り出すことは、ロシア側にとって好ましいことではない」と、ミロンは言う。
英国防省によると、この危機的状況を回避するため、ロシア側は現在、はしけを動かしている。部隊の補充や装備の移動に使う舟橋を作るためだ。
「数日前から、ロシアは、はしけの移動を始めた。おそらく、破損したアントニフスキー橋のすぐ横に、かなり本格的な浮橋を設置するためだろう」と、英国防省はツイッターで伝えた。
「この橋は、ロシア占領下のヘルソンと東部を結ぶ重要なリンクだ」
英国防省によると、橋がハイマースによる攻撃で被害を受けて以来、ロシア軍と地元住民が川を渡るには、フェリーに頼らざるをえなくなった。「ロシアが即席の橋を完成させれば、フェリーに比べて運送量が増えるのはほぼ確実だ」と、最新の英諜報機関の報告書は述べている。

コスパが悪い舟橋攻撃
だが英国防省は、舟橋はケルソンのロシア軍にとって、長期的な解決策にはならないかもしれない、と付け加えている。舟橋を作っても、「ウクライナ軍に攻撃されたら、ひとたまりもない状態」であることに変わりないからだ。
だがミロンは、舟橋の無防備さが、かえってロシア軍に有利に働く可能性もあると指摘する。「はしけの舟橋は安価で建設が簡単だ。それを破壊するために、高価なミサイルを撃ち込むことはウクライナにとっても効率が良くないだろう」

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https://news.yahoo.co.jp/articles/03a151d81a3e4776a8e5b29ad97adf1fe43a32ba