沖縄タイムス2022年9月1日 06:10
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新型コロナウイルス対策の行動制限がなくなり、沖縄県宮古島市には多くの観光客が訪れている。伊良部島の「三角点」と呼ばれる“絶景スポット”にも人が集まり始めた。海抜約70メートルの崖の上には測量の基準となる三角点と1畳ほどの開けた岩場があり、先端に立ったり腰かけたりして交流サイト(SNS)に写真をアップする観光客がいる。だが、ここは観光施設ではなく柵もない。転落すれば大事故につながる恐れがある。市観光商工課は昨年、入り口に立ち入り禁止の看板を設置したが、守られていないのが現状だ。(宮古支局・當山学)

■立ち入り禁止なのに

 「三角点」は伊良部一周道路の林の先にある。人が踏み締めた数十メートルの“道”は木の枝が張り出すなど険しく、抜けると崖に出る。2015年の伊良部大橋開通後、ネット上で「絶景スポット」「秘境」などと紹介され、広まっていった。

 直接的な担当部署ではないが、市観光商工課は「事故があってからでは遅い」と看板を設置し、時折状況をチェックしている。ただ罰則はなく「『行かないでください』としか言えない」と対応に苦慮している。

 「三角点」の入り口から約600メートル離れた場所にも「イグアナ岩」と呼ばれる人気の崖がある。「三角点」よりも人に踏み締められていて歩きやすい。崖の岩はごつごつして転ぶ危険性が高く、同課は「三角点」と同じく立ち入り禁止の看板を設置した。

 看板がむしろ目印になっているとの懸念もあるが、グーグルマップで名所のように表示されているため、隠しても効果は薄そうだ。

 同課は二つの崖への入り口ついて「入る人が多いようなら、県とも調整して入れないようにする措置を取らないといけない」と、物理的に通れなくすることも検討している。

■伊良部大橋でも

 無料で通れる国内最長の橋として人気の伊良部大橋の途中には、緊急車両用の駐車スペースが数カ所ある。一般車両は駐停車禁止だが、レンタカーを止めて写真撮影したり、欄干に身を乗り出したり、歩いて横切ったりする観光客が後を絶たない。タクシードライバーでさえ、観光客のために停車することがある。

 橋の入り口や途中に道路標識があるものの、ほとんど認識されていないか無視されている。また、肝心なスペースには駐停車禁止を知らせるものがない。

 宮古島側の橋の手前にある大型の電光掲示板で駐停車禁止を知らせている。ただ、伊良部島側の電光掲示板は点灯しておらず、一部は街路樹の枝で隠れているため、下地島空港からレンタカーで橋を渡る観光客には確認しづらい。

 大橋では17年に欄干から男性が転落して死亡する事故が起き、危険性が指摘されてきた。路側帯があるだけの幅が狭い橋だ。転落の危険だけでなく、人が車道にはみ出したり横切ったりすれば、交通事故を引き起こしかねない。

 宮古島署や道路を管理する県宮古土木事務所は、停車車両を見つけたり通報があったりしても、注意するだけにとどまっている。

 転落事故以降も抜本的な対策が取られないまま、外国人を含めて今後さらに増えるであろう観光客を迎え入れることになる。