旧統一教会系が神奈川の23市町村議会に陳情、川崎では自民通じ可決まで 「家庭教育支援法」の法制化促進

 川崎市議会が2018年に可決した「家庭教育支援法の制定を求める意見書」に関し、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関連団体関係者が自民市議に意見書案の提出を働きかけていたことが分かった。神奈川県内では同じ時期、計23の市町村議会に同様の意見書を求める陳情が出され、同じ団体関係者が一部に関与していたことが判明。教団の価値観と親和性がある政策を、地方政治を通じて後押ししている実態が浮かんだ。(太田理英子、奥村圭吾)
 「家庭教育支援法」は安倍晋三政権下で自民党が法制化を目指し、2017年に与党で法案を了承したが、公権力の家庭教育への介入を招くなどと野党が反発し、棚上げとなっている。
 川崎市議会で可決された意見書は児童虐待の増加などを根拠に「行政のより積極的な家庭教育への支援が必要」として、法制定を求める内容だ。自民、公明両会派が18年3月に連名で提案し、賛成多数で可決。国会に送られた。
 提案の経緯について、当時、議長だった自民の松原成文しげふみ市議は本紙の取材に「外部の団体から(依頼を)受けてやったと思う」と振り返った。教団の関連団体「世界平和連合」の関係者を名乗る男性との接点を挙げ「記憶はないが、当時の資料などから(依頼を受けたのは)私しかいない」と語った。
 男性とは数年前から付き合いがあり、関連団体のイベントなどにも出席していたという。男性は教団関連の政治団体「国際勝共連合」の神奈川県本部代表を務めている。
◆市議に働きかけた男性「ノーコメント」「記憶にない」
 さらに県内では同年、同様の意見書の提出を求める陳情が計23市町村議会に出されていた。少なくとも20件の陳情者は、県内の大学名誉教授(90)を代表とする「家庭教育を推進する神奈川県民の会」で、このうち3件では川崎市で働きかけた男性が実際に陳情の手続きを行っていた。
 名誉教授は、会や陳情について「覚えがない」と述べたが、過去に教団や男性と交流はあり「名前を使わせてくださいと言われた覚えはあるので、貸したのかもしれない」と話した。男性は「ノーコメント」「記憶にない」と繰り返した。
 相模原市議会への陳情者は、自身が信者だと認めた上で、市民団体の活動の一環だと主張した。
 衆参両院には17年から今年8月までに、神奈川県内の5議会を含む全国計34議会から、同法制定を求める意見書が提出されている。
 教団の広報担当者は「法人として法案に賛同する意思を表明したことは一度もない」とコメント。国際勝共連合と世界平和連合は期日までに回答がなかった。
 家庭教育支援法案 「保護者は子の教育について第一義的責任を有する」とした改正教育基本法に基づき、「生活に必要な習慣を子に身につけさせる」などを基本理念として定める。国や地方自治体、学校や地域住民の役割も規定。自民党のプロジェクトチームが2014年に検討を始め、17年の通常国会に提出を目指したが、野党の反発などで見送られ、その後も目立った動きはない。

東京新聞 2022年9月3日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/199678