文部科学省は7日、国公私立大の教員が専任教員と同等の身分で、複数の大学に在籍できるよう大学設置基準(省令)を変える方針を中央教育審議会の分科会に示し、了承された。データサイエンスや人工知能(AI)など成長分野での教員不足を補い、教育カリキュラムの編成など学部運営にも携われるようにする。10月1日に省令を改正する。

 政府は、イノベーション創出のため、研究者が複数の大学や公的研究機関、企業で働くことができる「クロスアポイントメント制度」の拡大を掲げている。

 大学設置基準では、一つの大学でのみ研究教育や運営に携わる「専任教員」の設置が定められている。大学や学部の規模に応じて必要最低数が決められ、専門性を持った教員が不足している先端分野の学部開設などの障害になってきた。

 文科省は、不足に対応するため「基幹教員」と名称を変更した上で二つ以上の大学に在籍できるよう基準を改める。これにより高い専門性を持つ教員が授業だけでなく、カリキュラムの編成など複数の大学の運営にも関われるようになる。

 また非常勤などで複数の組織に所属する教員についても年8単位の授業を受け持つことなどを条件に基幹教員として認める。必要最低数の4分の1まで算入できる。非常勤教員は企業出身者が多く、民間の知見を学部の教育プログラム策定などに生かすのも狙いだ。

 文科省は、改正によって「教員の働き方の多様化に対応するほか、多くの学生にとって専門性の高い内容を学ぶ機会が増えることも期待できる」としている。

 一方、日本私立大学教職員組合連合(日本私大教連)など3団体は6日、永岡桂子文科相らに改正を再考するよう求める要望書を提出した。「基幹教員」制度は、大学教員に占める非常勤の割合を拡大するものだとして「教員の雇用を不安定化させる。教育や研究の質低下も招きかねない」などと指摘している。【遠藤大志、李英浩】

毎日新聞 2022/9/7 19:35
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