大阪府の吉村洋文知事が9日、府庁で囲み取材に対応。府内のベンチャー企業「アンジェス」が7日に新型コロナウイルスワクチン開発中止を発表したことに、「成功に至らなかったことは残念に思います」と語った。

 効果が十分に得られず開発を断念した同社のワクチンは、吉村知事も期待を寄せ実用化のスケジュールなどを公言してきた「大阪ワクチン」だ。「全てが成功するわけではないが、チャレンジしないと成功もない」と挑戦自体を評価し、「スタンフォード大学と変異株の共同研究を行う。こちらは頑張ってもらいたい」と今後に期待した。

 厚労省などの補助金も得ていた開発で、世間からは厳しい声も上がる。この日も吉村氏の情報発信や目標・スケジュール設定は正しかったのかとの質問が飛び、「(アンジェス創業者)森下(竜一大阪大学大学院)教授から聞いた話に基づき発信したので問題ない。僕が独自に想像して発信したわけでない」と返す言葉にいら立ちがのぞいた。

 緊急承認が見送られ継続審議となっている大阪府に本社を置く塩野義製薬のコロナ経口治療薬「ゾコーバ」に話が及ぶと、「医師によって評価が分かれているので難しい」とした上で、「ただ緊急承認の制度はそもそも何のために作ったの?と思う」。安全性の確認は前提とする一方で、有効性が推定できれば承認する制度だが、「制度の趣旨に則って行われているのか」と疑問を呈した。

 「やらない方が日本では批判されない。でももし将来承認されたら、もっと前から承認申請が出てるわけで、第6波でも多くの命を救えたかもしれない。
そこの損失をまったく考えない社会のあり方を変えていかないと、日本は世界から置いて行かれると危惧している」と語気を強め、
「失敗、チャレンジを認める社会にならないと、じっと何もしない人ばかりが評価される」と主張した。

 最後は「今の塩野義の承認のあり方にどうこういうつもりはないですけど、国産の飲み薬には今も期待している」と冷静に締めた。

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