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欧米のインフレが懸念されるなか、岸田文雄政権下で日本経済はどのように推移すると考えられるか。

国民民主党は9月13日、「物価高から国民生活を守るための緊急経済対策」として、興味深い案を公表した。
総額23兆円の補正予算で、その内容は、国民に一律1人10万円給付をする「インフレ手当」(10兆円)、
電気料金に上乗せされている再エネ賦課金の徴収停止(1・4兆円)、
ガソリン補助金の継続とトリガー条項凍結解除(2・6兆円)、10%から5%への消費税減税(5兆円)などだ。

内閣府による9月月例経済報告では、
今年4~6月期のGDPギャップ(総需要と総供給の差)は17兆円程度。
内閣府の推計は過小になっているので、実際には28兆円程度だろう。

現在言われている政府の物価高対策は、予備費の範囲内で数兆円ほどの財政出動なので、
GDPギャップを埋められないという意味で力不足だ。

東京商工会議所が先月行った調査では、全体の半数以上が増加したコストの半分も転嫁できていない結果になっている。
その理由としては、需要が減少していることが多い。これは、GDPギャップが相当額あることと整合的だ。
これを放置すると、コストアップを企業がモロに受けるので、その後の雇用に悪影響が出る可能性が高い。
この点から言えば、政府の対策より国民民主党のもののほうがはるかにいい。

こういう話をすると、すぐに財源という議論になるが、実は財源はかなりある。

もちろん安倍晋三・菅義偉政権時の「政府・日銀の連合軍」と同様に、政府が国債を発行し、
民間金融機関額引き受けた後、日銀が最終的に買い受けるのでもいい。
ただし、インフレ懸念が大きい時には、円安を利用した他の方法でも簡単に財源が捻出できる。

まず、円安では国内総生産(GDP)増え、税収増にもなるのでその活用でもいい。
また、政府は外国為替資金特別会計(外為特会)で外貨証券を120兆円ほど保有しているが、
2021年3月末でのその円貨換算レートは1ドル=104円程度だ。
となると、今の為替レートでは約4割に当たる数十兆円程度の評価益が出ている。
であれば、それを財源化するのも一案だ。為替介入が為替相場に与える影響は一時的であるが、
為替介入による外貨証券売却で巨額の売却益が期待できるので、その財源化には大きな意味がある。

いずれにしても、GDPギャップを埋めるほどの30兆円程度の財政出動が必要だ。
逆にいえば、この程度の財政出動がないと、半年後以降の雇用環境は悪化するだろう。

さらに悪手は、円安そのものを是正しようとして、金融引き締め策をとることだ。
金融引き締めでは、伸びるべきGDPを抑えてしまうし、政府の保有する外貨証券の為替益も逃してしまう。

円安局面で外資に国内資産を買われると、安全保障上まずいという意見もある。
経済安全保障の観点から細心の注意を払うことには留意すべきだ。