旧優生保護法(1948~96年)下で不妊手術を強制されたとして、東京都と宮城県に住む60~70代の男女4人が26日午前、国に総額1億2900万円の損害賠償を求める訴訟を東京、仙台両地裁に起こした。弁護団によると、同日中に名古屋市に住む男女2人も名古屋地裁に提訴する予定。東京地裁に提訴した原告、西スミ子さん(75)=東京都日野市=が実名で毎日新聞の取材に応じ、「国に人生そのものを奪われた」と訴えた。

言われるままに手術、絶望
 西さんは大阪市生まれ。生後6カ月の時にはしかにかかり、高熱を出して脳性まひになった。幼少の頃は足を動かしづらい症状があったが、缶蹴りなど近所の子どもたちと遊ぶことはできた。9歳の時に院内学級がある医療施設に入院し、そこで暮らした。


 施設で手術を受けた足は次第に動かせなくなり、歩行が困難となった。初潮を迎え、14歳の頃に看護師から「生理がなくなる手術がある」と勧められた。看護師は手足が不自由な西さんの生理の処理を嫌がっており、言われるままに系列病院で手術を受けた。実際に生理は来なくなった。
 施設への入院は18歳までの年齢制限があり、その後は千葉県の障害者施設に入所した。そこで体の仕組みが書かれた本を偶然、手に取った。子どもを産むためには子宮や生理が必要なことを初めて知り、自分は子どもが産めない体になっているのではと絶望した。

 23歳の頃、施設の外で出会った男性と恋に落ち、結婚を考えるようになった。「本当に子どもができないのか」。母親とともに手術を受けた病院を訪ねた。難しい説明だったが、子どもが産めない体になっていることは理解できた。男性にその事実を告げると「だまされた」と別れを切り出された。

 80年、身の回りの手伝いをしてくれていた男性と結婚。どうしても子どもを育てたいと2人で乳児院を回ったが、収入が安定していないことなどを理由に子どもの引き取りは実現しなかった。夫婦関係は次第に悪くなり、94年に離婚した。


「清志郎さんのように」
 国は旧優生保護法による強制不妊手術の責任を認め、2019年4月に議員立法で1人当たり一時金320万円が支払われる救済法が成立。西さんは同年12月に支給が認められた。だが、子どもを産む権利を奪われた苦悩に対して金額が見合わないと、今年3月に厚生労働省に手紙を送った。手紙を読んだ同省の担当者から電話があり「これ以上求めるならば司法で訴えるしかない」と言われ、提訴することを決めた。

 西さんは現在、愛猫の「サム」と一緒にマンションで暮らし、寝たきりの状態で24時間ヘルパーの介護を受ける。反権力、反戦を歌い続けたロックミュージシャン、故・忌野清志郎さんの大ファンで、部屋ではいつも忌野さんの楽曲を聴いている。「旧優生保護法のせいで失ったものは私の人生そのもの。失った子宮の金額が一時金320万円なんてことはあり得ない。訴訟では、清志郎さんのように国に言いたいことを言い続けていく」と決意を語った。【遠藤浩二】

毎日新聞 2022/9/26 11:01(最終更新 9/26 11:01) 1244文字
https://mainichi.jp/articles/20220925/k00/00m/040/181000c
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