2014年に新発田市の女性を殺害した罪などに問われている男の裁判員裁判が17日に初公判を迎えます。新潟地裁で過去2番目に多い公判が予定されているこの裁判。そもそも女性は何者かに殺害されたのか。その「事件性」が争点となることが明らかになりました。

女性の遺体が見つかってから8年半。長い月日がたった今も現場には花が供えられています。

「女性はこちらの竹藪の先にある川の中で遺体として発見されました。発覚から8年半が経ち、ようやく事件に関与したとみられる男の裁判が始まります」〈記者リポート〉

殺人や強制わいせつ致傷などの罪で起訴されているのは喜納尚吾被告(39)です。起訴状などによりますと、喜納被告は2014年1月、新発田市の当時20歳の女性にわいせつ行為をして殺害した罪などに問われています。

【裁判のポイント①】「別の事件で罪が確定」

逮捕された際、刑務所に服役中だった喜納被告。すでに別の事件で無期懲役の判決が確定しています。その事件は今回の事件と同じ新発田市で起きています。2013年8月、30代と10代の女性に対する強姦事件。11月には当時22歳の女性への強姦致死事件。12月には20代女性をわいせつ目的で連れ去ろうとしました。さらに、2014年6月には勾留質問中、新潟地裁から逃走を図っています。その後、この5つの事件についての裁判が開かれ、2018年に無期懲役が確定しました。今回の裁判で審理されるのは、これら5つの事件と同じ時期に起きた殺人事件についてです。すでに刑が確定している罪がある中で同じ時期に発生した今回の事件は裁判でどう扱われるのでしょうか。

元検事で当時新潟地検に配属されていた飽津史隆弁護士です。判決が確定している事件と今回の事件は分けて考えることになると指摘します。

「本来であるならば併合罪として、今回の事件もすでに確定した事件と一括して処理して、全部が1個の事実として考えて1つの判決を下すという事が普通の考え方なんですが、今回はすでに確定判決が入ってしまっていますので、今回の事件は今回の事件で単体で別に考えないといけなという刑法50条の規定があります」〈飽津史隆弁護士〉

憲法にも「二重処罰の禁止」、つまり一度判決が確定すればその罪では二度と罰することができないという原則があります。

飽津弁護士は判決が確定している罪について、一つの要素として検察側が言及することは考えられると指摘します。

「被告人の人命軽視の態度が甚だしいという点の立証においては、なにかしら言及することはあると思います。一要素的な部分としては使えるのかもしれませんけども、正面切ってそれを使うのはなかなか難しいと思います」〈飽津史隆弁護士〉

【裁判のポイント①】「争点は“事件性”と“犯人性”」

喜納被告は逮捕当時「自分には全くわからないこと」と容疑を否認していました。

「まさに事件であるかどうかというところからおそらく争ってくるのかもしれません。そこでやっと有罪と認定出来て、さらに量刑判断という形になりますので、これは全体を通じて相当タフな公判になると、おそらく始まる前からそうなんじゃないかと容易に予想がつきます」〈飽津史隆弁護士〉

これまでに検察側と弁護側が争点などを絞り込む「公判前整理手続き」が28回開かれてきました。14日、その争点が明らかになっています。

まずは「事件性」です。女性は何者かに殺害されたのか。そもそも事件であるのかどうかが争われます。もう1つは「犯人性」。仮に事件だったとして、その犯人が喜納被告であるのかどうか。

今回の裁判は新潟地裁で過去2番目に多い14回の公判が予定されています。1番多かったのは2015年に行われた喜納被告の裁判でした。この時は被害者が4人いて公判は18回開かれています。

「(今回の裁判は)1件で14回、(前回の裁判は)数件で18回となると、(今回の裁判は)相当立証が細かい部分までいって、かなり細かいパーツを検察が立証していって、それで間接事実を積み上げていって立証していくパターンになるのが予想できるんじゃないかなという気がしますね。前回の無期懲役をどの程度考慮していいのか、考慮してはいけないのかという点に仕切りがあって、それに基づいて今回の事件にふさわしい量刑がなされるかどうか。そこは私はかなり注目しているポイントです」〈飽津史隆弁護士〉

10月17日から始まる喜納被告の裁判員裁判。判決は11月18日に言い渡される予定です。

https://news.yahoo.co.jp/articles/b6b8a374fecb99be9553cf3656fb94b6a006fabd
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