東京オリンピック・パラリンピックを巡る汚職事件で、大会組織委員会元理事の高橋治之容疑者(78)=受託収賄容疑で再逮捕=が、公式ライセンス商品の大会マスコットのぬいぐるみを販売した玩具会社の幹部に、元理事の知人が社長のコンサルティング会社への送金を指示した疑いがあることが関係者への取材で判明した。元理事はその後、コンサル会社から約800万円を受領したとされ、東京地検特捜部は玩具会社のライセンス取得を巡る賄賂の疑いがあるとして、受託収賄容疑で元理事を本格捜査する方針を固めた模様だ。

 このコンサル会社を巡っては、駐車場サービス会社「パーク24」の大会スポンサー契約の代理店となった大手広告会社「ADKホールディングス」からも約1900万円が送金されていたことが判明している。特捜部は、元理事がコンサル会社を複数企業からの資金の「受け皿」にしていた可能性があるとみて、ADKルートでの立件も検討している模様だ。

 関係者によると、玩具会社は「サン・アロー」。同社は2018年6月、大会マスコットの「ミライトワ」と「ソメイティ」のぬいぐるみを販売できるライセンス契約を組織委と結んだ。これに先立って、元理事は同社幹部から速やかに契約を締結できるよう依頼を受け、組織委側に働きかけた疑いがある。契約後には元理事の指示で玩具会社からコンサル会社に資金が送られ、その一部の約800万円が元理事に渡ったとされる。

 コンサル会社の社長は元理事と大学が同窓のゴルフ仲間。同社は当時、業務実態がほとんどなく休眠状態だったという。社長は玩具会社の幹部とは大学の同級生で、元理事とも親交があったとされる。

 また、元理事はパーク24のスポンサー契約について、組織委の委託先である専任代理店の大手広告会社「電通」に、ADKを再委託先にするよう働きかけた疑いもある。ADKは実際に再委託先となり、18年12月にパーク24が組織委に払った協賛金(スポンサー料)10億円の中から電通を通じて約3750万円の報酬を受領した。その直後、ほぼ半額の約1900万円をコンサル会社に送金したとされる。

 一連の五輪汚職事件で元理事は、広告会社「大広」から約1500万円の賄賂を受領したとして9月27日に再逮捕され、今月18日が勾留期限となる。関係者によると、元理事は玩具会社からの送金を認めているが、賄賂性は否定しているという。【二村祐士朗、井口慎太郎、松尾知典、島袋太輔】

毎日新聞 2022/10/15 02:00
https://mainichi.jp/articles/20221014/k00/00m/040/403000c