【ワシントン=広瀬洋平】国際通貨基金(IMF)は14日(日本時間15日)、運営方針を決める国際通貨金融委員会(IMFC)を開いた。ウクライナ侵攻を非難する文言案にロシアが反対し、春と秋の開催ごとにまとめる共同声明を出せなかった。見送りは今春に続いて2回連続。歴史的なインフレで世界経済の減速が懸念されるなか、国際協調の枠組みは揺らいでいる。

IMFC議長を務めたスペインのカルビノ経済相は終了後の記者会見で「ロシアが合意の可能性を阻み、全会一致を得られなかった」と説明。「参加者から戦争が世界中に不確実性をもたらす唯一かつ最も重要な要因であるとのメッセージが表明されていた」とも述べた。

代わりに出した議長声明は新型コロナウイルス禍や、ウクライナ危機による食料やエネルギー安全保障の観点から「世界経済は分断リスクの高まりにさらされている」と指摘。インフレ抑制に向けた米欧の利上げを念頭に「多くの通貨がボラティリティー(変動率)を高めて大きく動いたことを認識している」とも明記した。

途上国の開発を議論する世界銀行とIMFの「合同開発委員会」も同日、ウクライナ侵攻を受けて共同声明を見送った。見送りは2回連続となる。

日本は同委員会で「脆弱な中所得国については民間を含むすべての債権者らが債務持続可能性の回復に向けて協調して取り組むことが必要だ」と訴えた。経済危機に直面するスリランカの債務再編問題が念頭にある。日本、中国、インドの協調が求められるが、中国が融資情報の公開に難色を示し、問題解決が遅れているとの見方がある。

IMFCはIMFの諮問機関として1999年に設立。IMFに理事を送る国の財務相ら24人で構成する。共同声明は全会一致を原則としている。

日本経済新聞 2022年10月15日 5:56 (2022年10月15日 10:19更新)
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