小池知事の「妹分」後任に森村隆行都議 都民ファーストの会代表 初の「知事側近以外」 無投票の背景は

 東京都の小池百合子知事が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」の代表選が1日告示され、唯一立候補を届け出た都議の森村隆行氏(49)の代表就任が無投票で決まった。
◆「妹分」荒木千陽氏が後継指名か
 代表選は、都議1期目から約5年間にわたり代表を務めてきた荒木千陽ちはる氏(40)が7月の参院選に出馬、落選し、10月中旬に辞任したことに伴い行われた。過去2回の代表選はいずれも無投票で荒木氏に決まり、3回連続の無投票となった。

 都民ファは2017年の結党以降、小池氏と、知事特別秘書だった野田数かずさ氏、小池氏の衆院議員時代の秘書だった荒木氏と小池氏に近い人物が続けて代表を務めた。森村氏は商社勤務などを経て小池氏が立ち上げた政治塾「希望の塾」で学び、17年の都議選で青梅市選挙区(定数1)から初当選。現在2期目。小池氏の側近以外では初の代表となる。関係者によると、荒木氏から後継指名を受けたとされる。
 5日の党全体会合で承認を得て、正式に代表に就く。森村氏は本紙の取材に「党の資産である人材を最大限生かせる党運営をしたい。立候補は、荒木さんのやり方を踏襲するためではない」と述べた。
◆遠い体制刷新、無投票の背景に「圧力」指摘も
 都民ファーストの会の代表選は党勢衰退を案じた若手らが行動を起こしたが、無投票で、荒木前代表に近い森村氏に決まった。来春の統一地方選を前にしながら、党の体制刷新には至らなかった。
 荒木氏は「小池百合子知事の妹分」を売りに、今夏の参院選に東京選挙区から出馬し、惨敗。落選から3カ月以上、代表を続けた。その間、反発した都議3人は、都教育委員会が行う英語スピーキングテストを巡って造反し、除名に。荒木氏は10月中旬に突如、ツイッターで「現職議員が代表を務めるべきだ」との趣旨を発信し、公の場に姿を見せないまま引責辞任した。
約5年にわたり都民ファの代表を務めた荒木千陽氏㊨。小池知事の側近を自認していた
約5年にわたり都民ファの代表を務めた荒木千陽氏㊨。小池知事の側近を自認していた

 荒木体制からの刷新を求める若手らは、都民ファの都議で最年少の成清梨沙子氏(32)を担ごうとした。ある都議は「荒木さんが『成清さんが代表になったら一切協力しない』と圧力をかけた」と明かす。
 一方で、荒木氏は後継者選びに奔走。子育て中の女性都議2人に声をかける際は「(午前)9時(から午後)5時でいいから」と、なりふり構わず説得に当たったという。2人で折り合わず、森村氏を選ぶ裏で、造反問題が勃発。小池氏も一時、造反を思いとどまらせようと、都議らに電話で接触を試みたほどだった。
 結局、成清氏は直前に立候補を辞退。別の都議は「成清氏と周辺は、このままでは党が割れてしまうと判断したのではないか」と推し量る。
 都議会(定数127)での議席は、第1党に躍進した2017年の55から27まで半減した。党の衰退を裏付けるように、統一地方選で都民ファから出馬を模索していた新人が、少なくとも2人辞退したことが判明。都議の1人は「世間には落ち目の党だと思われている」とこぼした。
 党特別顧問の小池氏は10月28日の定例会見で党の立て直しについて「私の判断をあおぐまでもない」と党と距離を置く。1日も新代表選出に「(都民ファは)素晴らしい人材がそろっている。期待している」と述べるにとどめた。(加藤健太)

東京新聞 2022年11月1日 21時56分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/211477?rct=t_news