厚生労働省が8日発表した9月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、1人当たりの賃金は物価変動を考慮した実質で前年同月比1.3%減少した。6カ月連続のマイナスとなった。資源高や円安で加速する物価上昇に賃金の伸びが追いついていない。この状況が長引けば家計の購買力が下がり、景気回復の足かせになる。

実質賃金の低下が6カ月以上続くのは新型コロナウイルスの流行1年目の2020年3月?21年1月以来。当時は働く時間が減り、名目賃金が落ち込んでいた。

足元では名目賃金は緩やかに増えている。22年9月の現金給与総額は27万5787円と2.1%増えた。それ以上にインフレが進んでいるため、実質賃金が減る構図だ。賃金の実質水準を算出する指標となる物価(持ち家の家賃換算分を除く総合指数)の上昇率は3.5%に達している。

現金給与総額を就業形態別にみると正社員など一般労働者は2.4%増、パートタイム労働者は3.4%増だった。全体で残業代などの所定外給与が6.7%増と大きく伸びた。社会経済活動の正常化で働く時間が伸びており、1人当たりの総実労働時間は1.3%増の136.9時間となった。

厚労省があわせて公表した22年の夏季賞与は、支給した事業所の1人当たり平均が38万9331円と前年に比べて2.4%増えた。プラスは2年ぶりで、コロナ前の19年の38万1520円を上回った。飲食サービス業などコロナ禍の影響が大きかった業種で回復が目立つ。賞与を支払った事業所の割合は前年より1.7ポイント上がり、66.8%となった。

日本経済新聞 2022年11月8日 8:30
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