長崎県の私立高校の50代女性職員が、顧問を務める運動部の指導時間に対する時間外賃金などとして、高校を運営する学校法人に計約1600万円の支払いを求めた訴訟が長崎地裁であり、学校側が部活指導を労働時間と認めて8日、和解が成立した。女性の代理人弁護士が9日、明らかにした。

 和解条項は、部活動での練習指導や大会の引率など、顧問としての活動時間が労働時間にあたると学校側が認め、2018~19年度の時間外賃金を算定した額に相当する185万円の解決金を支払う内容。また、今後は労働時間が法定労働時間を超えた場合に割増賃金を支払うとも約束した。

 訴状によると、女性は1995~2000年に運動部の顧問を務め、いったん退職後、15年に同校と労働契約を結び運動部顧問になった。所定の就業時間は午前8時25分~午後5時5分となっていたが、平日は午前7時半ごろから朝練に参加。放課後は午後6~7時ごろまで練習を指導していた。

 女性は休日も指導し、私生活の時間をほとんど持てないにもかかわらず、超勤手当が月約1万4千円しか払われていないと主張。18~19年度分の時間外の未払い賃金905万円と制裁金として付加金674万円の支払いを求め、20年9月に提訴した。

 訴訟で女性側は、「学校は部活動強化で特色を出していた」と主張。離島など遠方の選手を特待生として勧誘し、寮を完備しない学校に代わって自宅で選手を下宿させており、このことについて学校側の承諾を得ていたが、経済的支援がなかったと訴えた。

 一方の学校側は、女性が長時間活動していたとしても、部活動は自主的、自発的な活動であり、公立校に準じた手当を支給しているなどと反論していた。

 記者会見した女性の弁護士によると、今年6月に裁判官が和解協議を提案。「学校の部活動への力の入れ方や、女性の業務内容からすると、部活の指導時間は労働時間に当たる」との考え方を示したという。

 成立した和解条項では、学校側は労働時間を適正に把握してこなかったことに遺憾の意を表明し、労働時間を把握するための具体的な措置を早急に講じるとしている。学校法人の担当者は取材に対し「この機会に全教職員の勤務管理を見直し、働きやすい職場作りのため、誠意をもって対応していきたい」と話した。(寺島笑花)

「過去に例のない画期的な和解」内田良教授
 「ブラック部活動」の著書が…(以下有料版で,残り544文字)

朝日新聞 2022年11月9日 21時19分
https://www.asahi.com/articles/ASQC96RHLQC9TIPE013.html