葉梨康弘前法相の辞任を受け、12月10日までの今国会会期の延長は不可避との見方が政府・与党内で強まった。立憲民主党など野党が対決姿勢を見せ、審議日程が窮屈さを増しているためで、1週間程度延ばす案が軸になる。世論の逆風が強まる中、岸田文雄首相は2022年度第2次補正予算案と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)関連の被害救済新法を確実に成立させ、信頼回復につなげたい考えだ。

 「任命責任を重く受け止めている。山積する課題に取り組み、職責を果たしたい」。首相は11日、葉梨氏の事実上の更迭を受けて首相官邸で記者団にこう強調。物価高対策を盛り込んだ補正予算案と救済新法の成立に全力を挙げる考えを示した。
 首相は19日に東南アジア歴訪から帰国する。政府・与党は21日にも補正予算案を国会に提出し、同日中に審議入りした上で月内に成立させる段取りを描いてきた。
 これに対し、立民は「法相辞任の経緯や任命責任を首相に厳しくただす」(幹部)と勢いづいており、与党が想定する衆参2、3日ずつの審議日程で折り合えるか見通せなくなった。10月に辞任した山際大志郎前経済再生担当相の例に倣い、野党が首相に衆参両院本会議での説明と質疑をまず求め、さらにずれ込むパターンもあり得る。
 新法は悪質な寄付勧誘の被害の救済・防止を図る内容。政府・与党は近く概要を野党に提示。立民、日本維新の会との4党協議などを経て法案化し、補正予算案成立後の12月初旬に審議に入りたい考えだ。
 ただ、新法制定に関わる法相の交代で作業が遅れる可能性は否定できない。立民は、新たに国民民主党とも協議を始めた与党に不信感を強めており、与野党の対決ムードも手伝って4党協議の行方は一段と不透明感が漂う。新法の提出が遅れ、審議日程が足りなくなる展開も予想される。
 政府が今国会提出を予定していた法案18本(補正予算関連法案と旧統一教会関連法案を除く)のうち、現状で成立は8本にとどまる。法相交代のあおりで民法改正案の衆院通過は先送り。感染症の流行時に感染が疑われる宿泊客の受け入れを拒否できるようにする旅館業法改正案など、一部の法案は既に会期内成立が絶望視されている。
 この状況に、自民党関係者は「1週間の会期延長が必要だ」と指摘する。23年度予算案の編成作業など12月は重要な政治日程が目白押しのため、1週間を超える延長は厳しい。綱渡りの国会運営が続くのは確実だ。

時事通信 2022年11月13日07時06分
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