政府は25日、相手のミサイル発射拠点をたたく「反撃能力」の行使要件案を与党に示した。「必要最小限度にとどまる」など武力を行使する際の3要件を満たす必要があり、対象は「軍事目標」に限定するとの考え方を説明した。

国家安全保障戦略の改定に向けた与党の実務者協議で提案した。反撃能力について現行のミサイル防衛体制では不十分な部分を補うものと位置づける案も提示した。自民、公明両党は能力保有の合意に至らず、来週以降に協議を続ける。

武力行使の3要件は①武力攻撃などで日本の存立が脅かされ、生命や自由に明白な危険がある②国民を守るために他に適当な手段がない③必要最小限度の実力行使にとどまる――を指す。

日本が侵攻を受ける「武力攻撃事態」は全要件を満たし、反撃もできることになる。

政府は同盟国などが武力攻撃を受けて日本の存立が脅かされる「存立危機事態」も反撃能力の行使対象から除外しない可能性を伝えた。

存立危機事態では集団的自衛権の行使が可能になる。認定には武力行使の3要件を満たす必要があるため、反撃能力の行使要件にも合致するとの見解だった。公明党は具体的にどのような事例が該当するのかを問題提起し、その場で受け入れることは見送った。

反撃対象を巡っては自民党がミサイル発射拠点だけでなく司令部などの「指揮統制機能」を含めるよう求めている。公明党は対象を「最小限度」にすべきだとの立場だ。

公明党の石井啓一幹事長は25日の記者会見で反撃能力の保有自体には前向きな考えを表明した。「しっかりした反撃能力があると示すことが結果として日本に対する攻撃を抑止することになる。抑止能力強化が最大の目的だ」と強調した。

政府は中国や北朝鮮を抑止する目的で反撃能力の保有を検討している。国産ミサイルの長射程化や米国製巡航ミサイル「トマホーク」の導入などの案がある。

25日の会合では防衛装備の輸出や譲渡を制限する「防衛装備移転三原則」の緩和も議題になった。自公両党は装備移転の要件を緩和する必要性では一致している。対象品目や移転先をどこまで拡大するかを調整中で、25日も結論を持ち越した。

日本経済新聞 2022年11月25日 20:00
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA258GF0V21C22A1000000/