「日英関係は日本が死刑廃止へ動けばさらに良くなる」。英国のジュリア・ロングボトム駐日大使が死刑制度を巡り、日本の政治家らとの会合で積極的に発言している。10月、閣僚ら約210人が出席した杉浦正健元法相の米寿を祝う会のスピーチで死刑廃止を働きかけた。なぜ現職の大使として異例の呼びかけをするのだろうか。【長野宏美】

 英国では政治家主導で1965年に5年間の死刑執行停止を定めた法律が成立し、すべての謀殺(計画的殺人)に対する終身刑が導入された。この間に凶悪犯罪の推移に大きな変化がなかったことなどを踏まえ、69年に反逆罪など一部を除いて死刑を廃止し、98年に全面的に廃止した。

 日本の死刑制度が外交に及ぼすマイナスの影響は、犯罪捜査の国際協力などを巡ってしばしば指摘されている。例えば、英国は犯罪人引き渡し条約を100カ国以上と結んでいるが、日本が締結しているのは米国と韓国のみ。米韓は死刑制度があるが、韓国では97年を最後に執行されていない。死刑廃止国は死刑がある国に犯罪人を引き渡すことに抵抗感があるとみられている。

 ロングボトム大使は今月7日にも超党派の議員連盟「日本の死刑制度の今後を考える議員の会」(会長・平沢勝栄衆院議員)で、死刑が外交に与える影響などを話し「重要なのは政治のリーダーシップ」と呼びかけた。

 発言の真意はどこにあるのか。ロングボトム大使に聞いた。

 ――日本に死刑制度があることで、日英関係にどのような懸念が…(以下有料版で、
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毎日新聞 2022/12/18 07:00
https://mainichi.jp/articles/20221217/k00/00m/040/191000c