日本銀行の金利政策の修正を受け、20日の東京金融市場は大きく反応した。長期金利は約7年半ぶりの水準に急上昇し、外国為替市場では約4か月ぶりの円高水準に。日経平均株価(225種)は一時、前日終値比800円超下落し、日銀の「サプライズ」決定に揺さぶられる形となった。


利上げ1回分
 「ついに日銀も金融引き締めか」。中堅証券のアナリストは身構えた。

 午後0時半過ぎ、東京債券市場で、長期金利の代表的な指標となる新発10年物国債の流通利回りは一時、0・460%に上昇(債券価格は下落)した。7年5か月ぶりの水準となる。

 日銀が長期金利を操作するイールドカーブ・コントロール(YCC)が事実上の金利水準を決めてきた。変動幅の拡大は、市場参加者にとって従来よりも利益を出しやすい環境になる。

 みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「今回の修正は1回分の利上げに相当するという見方もできなくない」と指摘した。

15分で4円
 為替も大きく反応した。利上げを続ける米国に対して拡大し続けていた金利差が縮小に向かい、ドルを売って円を買う動きが加速した。

 午前中は低調な値動きだった東京外国為替市場の対ドル円相場は、発表を受けると約15分間で1ドル=133円台前半まで4円超も円高・ドル安が進んだ。その後も円高は止まらず、午後3時頃には132円台をつけた。

 円相場は米国の急速な利上げで、10月に一時、約32年ぶりに1ドル=150円台をつけた。ただ政府・日銀による為替介入を経て、12月以降は130円台後半の水準で落ち着いていた。

 市場では「年明け以降の相場は再び荒い値動きになる。さらなる変動幅拡大もあるとみた投資家が、投機的な動きを繰り返す可能性がある」(松井証券の窪田朋一郎氏)との見方が出ている。

 一方、日銀は早期の追加政策変更は否定しており、りそなホールディングスの石田武氏は「当面は1ドル=130円近辺が続く」との見通しを示す。

一時820円安
 株式市場でも混乱が広がった。

 日経平均は前日まで3営業日で900円超下落した反動で、20日午前は前日終値に比べ小幅高で取引を終えていた。しかし午後の市場が開くと、売り注文が殺到して全面安の展開に。日経平均の下げ幅は一時、820円に達した。

 景気動向に敏感な半導体関連株や、円高が業績に不利に働く自動車など輸出関連株の売りが目立った。一方で、金利上昇が業績の押し上げ要因となる銀行や保険といった金融関連は買われた。

 日経平均の終値は前日比669円61銭安の2万6568円03銭となり、約2か月ぶりの安値水準だった。

 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘チーフ投資ストラテジストは「外国人投資家はまだ反応できていない。市場には明日以降、長期的な影響が出るだろう」と指摘。その上で「今回の修正が10年間の緩和策が大きく変化する最初の一歩になる可能性がある」と予想する。

物価安定の実現 財務相「目指す」
 日本銀行が金利政策を修正したことについて、鈴木財務相は20日夕、財務省内で記者団に「今回の決定は緩和的な金融環境を維持しつつ、市場機能の改善を図ることで物価安定目標の実現を目指すものだ」と述べた。

 西村経済産業相は記者団に「いま企業の投資意欲は非常に高まっている。今回の措置によって企業の起債が円滑に行われ、投資促進につながることを期待したい」と語った。

「妥当な措置」 日商会頭
 日本商工会議所の小林健会頭は20日の記者会見で、日本銀行が金利政策を修正したことについて「(金融政策の正常化を進める)欧米に一歩近づくという意味で妥当な措置」と評価した。

 小林会頭は、日銀のイールドカーブ・コントロールにひずみが生じていると指摘。「是正することで日銀もコントロールしやすくなる」と述べた。

 一方、「企業全体としては金融コストが上がり、コストプッシュがある」として、会員の大半を占める中小企業への負担増に懸念も示した。

読売新聞 2022/12/21 07:24
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20221221-OYT1T50011/