0001ごまカンパチ ★
2023/01/10(火) 18:40:51.78ID:fkp3M56n9【近ごろ都に流行るもの】
白木のカウンターに背筋が伸びる高級すしでなく、回るすしでもない。独創的な「カタカナスシ」という新業態が台頭している。
ネタの組み合わせや見た目が斬新。カジュアルな雰囲気で若者を意識した中価格帯のすし店だ。
高級店と回転ずしチェーンの二極化のはざまで街のすし店が徐々に姿を消すなか、「気軽に飲めるすし屋」としての原点回帰も狙っている。
修業10年といわれるすし職人の世界だが、経験ゼロでも提供できるオペレーションが確立しているそうな。どんなすし屋なのか?
■デカっ! マンゴーカットの本マグロ
JR御徒町駅南口前。昨年12月に開店した「ほぼ上野オスシマチ」(東京都台東区)を訪ねた。
出てきたのは、マンゴーのようなサイの目カットの中トロだ。「デカっ!」っと声が上がる。ネタだけで40グラムもあるそうだ。
行儀が悪いが半分かじるとトロリと歯切れがよく、薫香と脂のまろやかさが広がる…。表面を炙り、卵黄のしょうゆ漬けで味つけしているという。一貫549円。
「本格的なおすし屋さんからは、こんなのすしじゃないと言われるかもしれませんが、マグロはすべて生の本マグロです」と山崎栄士郎マネジャー(40)。
カンパチにオレンジと洋風タレ、サーモンとシャリの間にクリームチーズが仕込まれるなど遊びがある半面、味は計算されているようでまとまっている。
「用意はいいですか?」。並んだ巻きずしの上の透明な筒を外すと、赤いイクラと白いトロロが流れ出した。動画撮影タイムだ。
客層は30歳前後の男女が多く、平均客単価は5千円を切る。
「仕事帰りに軽く飲む。昔ながらの寿司屋の使い方はこうだったと伝えたい」と山崎さん。
日本酒は7つの酒蔵からタンクで直送された火入れ前の生酒を日替わりで提供している(90ミリリットル、659円)。
驚いたのは、スタッフが青いビニール手袋ですしを握っていることである。
「シャリが手にまとわりつかないよう手袋を着用する場合もある。機械と人の手を使ったハイブリッドな握り『一手すし』という手法を開発し、
未経験者でもすしを提供できる店づくりをしています」
カタカナスシの業態開発を手掛けるスパイスワークスホールディングスの下遠野亘社長(48)が説明した。
握りずしの手袋着用は、衛生面から世界的な流れでもあるという。
店舗設計・施工からメニュー開発、運営、プロデュースまで手掛ける下遠野社長は「カタカナスシと呼ばれる、すし酒場業態ブームの火付け役」として
昨年末、専門紙・誌で構成する外食産業記者会の「外食アワード」に選ばれた。
平成22年。生でも提供できる馬肉などをネタにした「肉寿司」のヒットを皮切りに、新時代のすしの模索が始まった。
ハレの日のごちそう「寿司」、旨くて高級な「鮨」、逆輸入「SUSHI」といった既存のジャンルにない、日本独自の新たなすしを「カタカナスシ」とネーミング。
若者が苦手な酸味を和らげた黒酢のシャリを使い、Wi―Fiや各テーブルにコンセントを設置するなど、現代のライフスタイルに配慮した店舗づくりも進めた。
令和3年に開店した「スシンジュク」(東京都新宿区)は、繁盛店の月間坪売り上げの目安が30万円とされるなか、84万円という盛況を博し、
同社は現在7店舗のカタカナスシを展開。他社でもカタカナ店名の創作すし店が増え、この手の新業態全体がカタカナスシと呼ばれるようになっている。
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動画サイト「ユーチューブ」で握り方を覚えた人が出した店が繁盛している例もある、何でもありの時代。
昨今の変化と多様化には、食の伝統の面から「邪道」との声も出よう。
しかし、握りずしが生まれた江戸時代後期(1800年代前半頃)当時の大きさは今の2~3倍もあったそう(ミツカンのHPより)で、
時のなかで変遷を重ねてきた美食のようだ。先祖返りかアバンギャルドか!? すしの世界に、また新しい風が吹いている。