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あんぽん
(佐野 眞一著、小学館)

 「あんぽん」とは、在日韓国人であった孫正義が、かつて名乗っていた日本人名「安本(やすもと)」を音読みしたもので、子供のころ「あんぽん」と揶揄されていたとのことである。朝鮮人であることで差別をうけ、石を投げつけられたこともある。その時の傷が孫正義の頭には今も残っているという。
 著者佐野眞一は、孫正義に関する読み物としては、最もおもしろいものにしたいとの意欲を持って、孫正義が幼少時代を過ごした九州の鳥栖を初め、朝鮮半島にまで足を伸ばして取材をしている。
 孫家は、韓国南部の大邱(テグ)近郊の辺鄙な集落にいたが、作物が育たず、困窮を極めたため、孫正義の祖父の時代、密航のようにして来日している。そして、九州の朝鮮人集落に落ち着き、そこで養豚業を始める。さらに豚小屋の奥では酒を密造した。そこで、生まれた孫正義の父、安本三憲も養豚と密造をするのだが、さらに貸金業、パチンコ業へと転身し成功をおさめる。

一方の★ ⇒母方の李家も、同じく朝鮮からやって来た渡来者で、その二世として孫正義の母親・玉子が生まれた。