電気自動車(EV)メーカーの米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、自動運転支援システム「オートパイロット」の性能を誇張した2016年の動画の作成を監督していたことがブルームバーグが確認した社内電子メールで分かった。テスラ車が自律的に走行したと主張する冒頭のテキストは、マスク氏が直接指示する形で作られていた。

 マスク氏は16年10月、テスラのオートパイロット担当チームに宛てたメールで、同システムを宣伝するためにデモンストレーション走行の重要性を強調。約1週間後にマスク氏は派手な発表を行った。テスラは同年10月19日の記者向け電話会見とブログ投稿で、今後は同社の全ての車が完全な自動走行能力に必要なハードウエアを搭載して出荷されると説明した。

 マスク氏は電子メールで、「素晴らしいオートパイロットのデモ走行を達成することが全員の最優先課題であることをはっきりとさせておきたい」と述べ、一部については暫定的なコードを使用して後でソフトウエアを無線でアップデートしても構わないとする考えを示した。

 一連のメールは、6年余り経過しても実現していない性能についてマスクCEOとテスラが主張する前の同CEOの考え方に浮き彫りにした。テスラはハードウエア改良を繰り返した後、現在に至っても顧客に、オートパイロットと「完全自動運転(FSD)」の使用時はハンドルに手を置きいつでも運転を引き継げるように準備するよう求めている。

 ブルームバーグ・ニュースは昨年10月、テスラが自動運転能力に関して誤解を招く説明をしたかどうか米司法省のワシントン、サンフランシスコ両地区の検察当局と証券取引委員会(SEC)が調査していると報じていた。

 マスク氏とテスラにコメントを求めたが返答はなかった。

Bloomberg Dana Hull、Sean O'Kane 2023年1月20日 7:58 JST
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-01-19/ROR131DWX2PS01