女性が性行為や避妊のことで孤立したり悩んだりしない社会を――。東北芸術工科大学(山形市)デザイン工学部企画構想学科4年の早坂緋奈乃さん(22)が、コンドーム専門メーカー「中西ゴム工業」(堺市)と協力し、新商品を開発した。お守り型コンドーム入れ「COMAMORI(こまもり)」とメッセージシール付きコンドーム「comamo(こまも)」の2種類で、25日に発売する。

 仙台市出身の早坂さんは高校時代、性別の違いで生じるさまざまな格差(ジェンダーギャップ)に関心を持った。東北芸工大に進学し、ギャップの解消に取り組もうと考えていた2021年秋、専門学校に通う友人が妊娠し出産。それがきっかけで22年春、避妊に関して女性が自ら選び、未来を守れる社会を目指す「COMAMORI PROJECT」を思い立ち、卒業制作のテーマに決めた。

 中学の授業で性行為や避妊について学んだものの、気まずさや恥ずかしさから、大学生になってもコンドームを話題にすることにためらいがあったという早坂さん。若い世代が手にしやすいコンドームや関連商品があれば――。そうした思いで自ら開発に挑もうとする姿勢は大学側を驚かせた。「5月にテーマを初めて先生方に説明した時は、みんな戸惑った様子でした」と早坂さんは笑う。

 それでも、そんな風潮こそ変えなければと奮起。中西ゴム工業がコンドームを若い世代に身近に感じてもらう活動に協賛していると知り、企画を持ち込んだ。商品コンセプト、デザイン、販路開拓、納期、予算など、できる限り自分で提案した。「やらせてほしいと言ったものの、こんなに一つの商品を作るのが大変とは思わなかった」と苦笑するが、本気の早坂さんに同社も全面協力したという。

 「こまもり」(税抜き800円)は、中にコンドームが1個入っている。性行為の機会がなく、コンドームが身近にない高校生や大学生向けで「避妊具を人生設計のお守りにしてほしい」との願いを込めた。

 「こまも」(税抜き600円)は、性行為の際にコンドームの使用を相手に求めにくい女性向け。「I love you」や「Love me?」などのメッセージが書かれたダイヤモンド型のシールとコンドーム6個が入っている。シールを貼って指輪に見立て「避妊は相手を思いやり、愛を誓いあう行為だ」との思いをさりげなく伝えられるようにした。

 若い女性が利用する雑貨店などで購入できるよう交渉中で、早坂さんが卒業する3月までは「COMAMORI PROJECT」のSNS(ネット交流サ
ービス)で購入方法などを発信していく。早坂さんは「避妊を積極的に話題にできない女性にぜひ使ってほしい。望まない妊娠で夢や将来が左右されることもあるので、目標に向かって頑張っている人も手に取ってみて」と話す。【横田信行】

毎日新聞 2023/1/22 12:30(最終更新 1/22 12:59)
https://mainichi.jp/articles/20230120/k00/00m/040/130000c