人間の「ミニ脳」でラットの脳損傷を修復する初の実験に成功
Gigazine2023年02月03日 12時30分
https://gigazine.net/news/20230203-rat-human-mini-brains-injured/

人間の脳のミニチュアモデルである「脳オルガノイド」を実験室で製造し、これを生きたラットの脳の損傷部分を修復するために使用するという初の実験が行われました。将来的には、この脳オルガノイドを用いて人間の脳の修復もできるようになる可能性があります。

脳オルガノイドをラットの脳に移植するという実験に挑戦したのは、ペンシルベニア大学ペレルマン医学部で神経外科の助教授を務めるハン・シャオ・イザーク・チェン氏らの研究チームです。実験結果は2023年2月2日に、幹細胞研究に焦点を当てた科学誌・Cell Stem Cellで発表されており、人間の幹細胞から成長させた脳オルガノイドをラットの視覚野に移植することに成功しています。

光が目の網膜に当たると、電気メッセージが「一次」視覚野に伝わり、目の前にあるものの基本的な特徴を解析し始めます。このデータは分析をさらに一歩進めるための「二次」視覚野に転送されることとなります。チェン助教授らの研究では、二次視覚野に重大な損傷を負っている成体のラットに、脳オルガノイドを移植するという実験を行っています。

過去の研究では、科学者は個々の脳細胞をさまざまな年齢の健康なげっ歯類に移植してきましたが、脳オルガノイドの移植は非常に若く、負傷を受けていないげっ歯類に限定されてきました。しかし、今回の実験では年老いて負傷したラットに脳オルガノイドを移植しているため、「この研究は脳オルガノイドを使用して脳損傷を修復するための新たな一歩を示しています」とチェン助教授は語りました。

研究チームは異なる種類の細胞を生み出すことができるヒト幹細胞の一種から、脳オルガノイドを培養しています。研究チームは80日間にわたり、研究チームは科学的合図を用いて幹細胞を誘導し、ヒトの大脳皮質にみられる多くの種類の細胞を含む三次元のかたまりを生成。これが脳オルガノイドです。大脳皮質には6つの層がありますが、80日目には実験室で培養した脳オルガノイドに大脳皮質で見られるような初歩的な層が形成されていたとのこと。
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