被爆者の実の子である「被爆2世」が被爆者のような援護策を受けられないのは法の下の平等を定めた憲法14条に違反するなどとして、国に国家賠償を求めた訴訟の判決が7日、広島地裁であった。森実将人裁判長は、被爆2世と被爆者では健康被害が生じる可能性が大きく異なるとし、施策の違いが「不当な差別とは評価できない」と判断。原告側の請求を棄却した。原告側は控訴する方針。

 同種訴訟の判決は、昨年12月の長崎地裁に続いて2例目。いずれも原告側の敗訴となった。

 国は被爆者援護法に基づき、原爆が投下された際、爆心地近くにいたり、後に爆心地近くに入ったりして放射線を直接浴びた被爆者(昨年度末現在で11万8935人)に対し、がん検診を含む健康診断の無料実施や各種手当の交付などの援護をしている。だが、全国に30万~50万人いるとみられる被爆2世は対象外。厚生労働省が定めた要綱に基づく健康診断を実施しているが、がん検診を含まない。

戦争被害の「受忍論」を引用
 判決は、戦争による損害について、最高裁が打ち出した「国の存亡にかかわる非常事態のもとで、国民が等しく受忍しなければならなかった」とする「戦争被害受忍論」を引用し、原爆による健康被害についてもそれは変わらないとした。

 その上で、原爆の放射線の被爆2世に対する遺伝的影響は研究途上のため、健康被害の可能性を明確に否定できないが「遺伝的影響があることが通説的見解や有力な見解になっていない」と指摘。科学的知見を踏まえ、原爆の放射線に直接被爆した可能性があると定義された被爆者に対し、被爆2世は「科学的に承認も否定もされないという意味での可能性」にとどまるとした。

 そして、援護の対象範囲をどう定めるかは、国会の裁量に委ねられるとし、被爆2世に被爆者らと同等の援護をしなくても憲法違反にはあたらず、国に賠償責任はないと結論づけた。(福冨旅史)

被爆者が不安を抱くのは「自然なこと」
 判決は、原爆による戦争被害は、放射線被害を含む点でほかの戦争被害とは異なると言及。放射線の遺伝的影響による健康被害の可能性が、科学的に明確に否定されていない現状を踏まえ、「被爆2世である原告らが自らの健康などについて、不安を抱くのは自然なことだ」とも指摘した。

 日本原水爆被害者団体協議会…(以下有料版で,残り846文字)

朝日新聞 2023年2月8日 7時30分
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