朝日新聞2023年2月22日 19時50分
https://www.asahi.com/articles/ASR2Q6HTDR2QUTIL03S.html

 医師らが患者を診療する際、マイナンバーカードを使った健康保険の資格確認を義務づけられるのは違法だとして、医師や歯科医師274人が22日、国を相手取り、義務がないことの確認などを求めて東京地裁に提訴した。今後、全国で原告を募り、追加提訴するという。

 国は昨年、健康保険法に基づく規則を改正し、患者らがマイナンバーカードでの資格確認を求めた場合に応じることや、対応する設備の整備を保険医療機関に義務づけた。規則は今年4月に施行される。

 原告らは訴状で、対応しなければ保険医療機関の指定が取り消される恐れがあり、「多大な費用や情報漏洩(ろうえい)のリスクの負担を余儀なくされている」と主張。「義務化は健康保険法が想定する範囲を逸脱して違法」と訴えている。

 提訴を呼びかけた東京保険医協会の須田昭夫会長は会見で「現在の目視確認でもほとんどトラブルはない。紙の保険証でできるのになぜしなければいけないのか。医療をよくする気があるのか疑問だ」と話す。医師らの間では「義務化されれば廃業せざるを得ない」との声もあるという。

 厚生労働省は「訴状を受け取っていないのでコメントは差し控える」とした。義務化については「一般論としては、患者の健康医療情報を有効に活用し、より良い医療を提供していくことに資するものだと考えている」と説明した。(田中恭太)