飲食店などで迷惑行為を撮影した動画がSNSで拡散され、問題となるケースが相次いでいます。回転寿司チェーン店で湯飲みを舐め回す、牛丼チェーン店でテーブルに設置されている紅ショウガをじかに食べる、スーパーの入り口に置かれたアルコール消毒液に引火させ火炎放射するなど、書き切れないほど起きています。線路にコーンバーをやり投げする若者の動画も拡散され、迷惑行為を超えて危険行為に発展しています。

 こうした「迷惑動画」は、学生や20代の若者によって投稿されていることがほとんどです。迷惑動画は、今に始まったことではありません。10年ほど前、コンビニ店員がアイスケースに入った写真を「Facebook」に投稿し、その画像がネットを駆け巡りました。ほかにも、アルバイト中の店員による迷惑行為が相次ぎ、社会問題になりました。その頃は「Twitter」で拡散されることが多かったため、「バカッター」という言葉が生まれています。

 その後、「Instagram」のストーリーズで迷惑行為の動画を投稿するようになり、「バカスタグラム」と呼ばれました。Instagramのストーリーズは、公開範囲が限定できる上に24時間で消去されます。ところが、その投稿はほかの誰かによってスクリーンショットで撮影、または「画面収録」などの機能で録画され、Twitterや「YouTube」、まとめサイトへと拡散されていきます。最近の迷惑動画は「TikTok」にも投稿されますが、同じようにネットで拡散され、大手メディアに取り上げられ、「デジタルタトゥー」としてネットに残されます。

内輪ウケ狙いが仇に
 なぜ若者は迷惑動画をSNSに投稿するのでしょうか。それは、彼らのSNSが実際の友人との交流が目的であることに関係しています。迷惑行為をして仲間うちで目立ちたい、ウケを取りたいという気持ちで迷惑行為を投稿するのです。その動画が知らない人の手に渡れば炎上する可能性があることは、知識としては理解しています。でも「自分たちは大丈夫」と正常バイアスが働き、つい投稿してしまうのです。

 しかし、内輪ウケを狙ったからといって、迷惑行為をするべきではないと憤る友人も多くいます。反感を抱いた人は、懲らしめるために公開範囲を超えて拡散するかもしれません。また、「あいつが炎上したら笑える」と悪ノリして拡散する人もいるでしょう。

 一度ネットに上がった情報は、二度と消すことはできません。本名や学校名がばれると学校へ苦情の電話が殺到するため、自主退学した人もいます。企業から訴訟を起こされるケースもあり、家族にも大きな影響が及びます。

 そして、迷惑動画を撮影、投稿した人も企業から損害賠償を請求される可能性があります。迷惑行為をしないことはもちろんですが、もし友人が迷惑行為をしたら、止める勇気も大切です。一緒に面白がって撮影して投稿すると、友人の人生を大きく変えてしまうかもしれません。保護者の方には、お子さんに迷惑行為をしないこと、撮影・投稿しないこと、拡散しないことをお話ししてもらえたらと思います。

 また、私たち大人も注意が必要です。迷惑動画を見かけて転載する人、本人の身元を特定する人、まとめサイトに残す人たちも、内容次第では罪に問われる可能性があります。拡散には手を貸さず、関係者の対応を見守ることも大切だと思います。

https://project.nikkeibp.co.jp/pc/atcl/19/08/28/00031/032200125/