【Q&A】日銀の植田新総裁就任で黒田体制の「大規模金融緩和」はどうなる? 最初に見直される政策は?

 日銀新総裁の植田和男氏は10日、就任会見を行い、黒田東彦はるひこ前総裁が続けてきた大規模な金融緩和の一部修正を視野に入れていることを明らかにしました。市場も国債の大量購入による副作用が大きくなっているため、任期中に政策を修正するとみています。どう修正し、暮らしにどのような影響が出るのでしょうか。(寺本康弘)
 日銀の政策 総裁と2人の副総裁、審議委員6人の計9人による「政策委員会」を最高意思決定機関とし、年8回金融政策決定会合を開く。正副総裁、審議委員の任期はいずれも5年。黒田東彦前総裁が行った大規模緩和では、国債や上場投資信託(ETF)などを大量購入し金融市場にお金を流したほか、マイナス金利政策や長期金利を抑える政策がとられた。

 Q 最初に見直されそうな政策は。
 A 市場関係者が最初に修正するとみているのが、抑え込んでいた長期金利(10年国債の利回り)の上限(0.5%)の修正または撤廃です。ただ金利の上昇要因にもなり、住宅ローンの固定金利が上がるため新たに借りる人に影響する恐れがあります。
 長期金利を抑える政策は世界的にも異例です。昨年、米連邦準備制度理事会(FRB)など、海外の中央銀行が物価高の抑制で政策金利(短期金利)を引き上げる中、日本の国債も投資家から売られるなどして金利に上昇圧力がかかりました。日銀は金利を抑え込むため大量の国債を購入していますが、このことで海外との金利差が大きくなり円安が加速するなど副作用も目立ち、継続が難しくなっています。
 Q その次の修正は。
 A 長期金利に上限を設ける政策をやめても、金利の急上昇を避けるため国債購入は続くとみられますが現在マイナスになっている政策金利をゼロに引き上げることが考えられます。ゼロ金利にしても「超緩和の状態」は変わりません。それでも緩和の度合いが弱まれば、円高に傾きやすくなります。輸入品や原材料など物価上昇の速度を抑える効果が期待できます。
 Q ゼロ金利を解除できるでしょうか。
 A 政策金利を上げることは金融政策の「引き締め」になり、住宅ローンの変動金利や企業の短期借り入れ金利の上昇を招くため、景気を冷やす恐れがあります。欧米のように物価上昇が止まらない、または日本の景気が力強く上向けば、政策金利の引き上げも考えられますが、長年経済が停滞する日本では難しそうです。
 東短リサーチの加藤出氏は政策金利を引き上げれば「金利が上がらない前提で(借り入れて)いた企業や家計にショックが及ぶ恐れがある」と懸念します。植田氏は慎重に政策を進めることが求められそうです。

東京新聞 2023年4月11日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/243306