>>26の続き
1)情報の収集と分析:犯罪の実態を把握するため国連の人権機関に寄せられた被害報告の読み込み作業と分析を行っています。

その中で分かってきたのは、嫌がらせテクニックの種類の多さと著しい非人道性です。嫌がらせの種類は、「集団監視」「電磁攻撃」「信用毀損」の3つに大別できると私は考えます。

「集団監視」では、盗聴・盗撮・ハッキングを利用した集団的なストーキングと監視の事実の示唆を行います。
「電磁攻撃」では、高度な科学技術を駆使して電磁的な攻撃を被害者に対して遠隔的に行い、精神上・身体上の健康被害を引き起こします。
「信用毀損」では、悪評の流布やプライバシーの暴露を通じて被害者の社会的信用を低下させます。

私の研究では、これらの嫌がらせテクニックを心理的、精神的、肉体的、物理的、環境的、制度的、社会的等々の視点から分類整理し、被害実態の体系的な把握と理解を目指します。

2)先行研究の分析考察:ギャングストーキングに関する被害報告を受け、国連の人権機関では「拷問や虐待を助長する生物心理社会的要因」というテーマで、原因究明に関する研究報告が行われました。

私はこの研究報告の翻訳と分析を進めていますが、その報告の特徴は道徳的判断の非力さを強調する点にあります。

その上で着目されるのが「利己心(self-interest)」の概念です。直訳するなら「自己への利害関心」と言ってもよいでしょう。
ここでの「自己」は個人の場合もあれば集団の場合もあります。報告では、拷問や虐待行為に加担する人々の「利己心」に関して、
「自己保全」「自己決定」「自己肯定」「自己正当化」「自己充足」への要求が基本要素として挙げられました。

報告者によれば「利己心」それ自体は一般的なものですが、特定の状況においては過剰で歪んだ形で表れ、
それが社会全体の「自己安住(complacency)」、言うなれば犯罪に加担する人々の思考停止状態を助長する一因となります。
報告者はこれを「悪の凡庸さ(banality of evil)」という言葉で特徴づけています。