>>27の続き
3)「プラクシスの美学」からの考察:「思考停止」「悪の凡庸さ」はユダヤ系哲学者H・アーレントに由来する言葉で、ナチ時代に人々が残虐な行為に安易に加担してしまった雰囲気情況を言い表しています。

そして、アーレントによると、このような情況には美醜の判断の欠如が関係しているとされます。

この思想背景を踏まえ、ギャングストーキングの問題解決に向けて私は「プラクシスの美学」の見地から考察を進めています。

「美学」の原語的な意味は「感覚論」「感性論」ですが、「人間(個人や集団)に対して襲い来る雰囲気的な情感性から自身の感性的な自由を保持しようとする点」に重心を置くとき、これを私は「プラクシスの美学」と呼びます。
伝統的な美意識には「美」と「崇高」の2つがあって、特定の「利害関心」を免れていることが美意識が成立するための必要条件となります。
そして、「美しい」という美意識は自身の自由な感覚能力を「自己肯定」する営みであり、「崇高」という美意識は自身の自由な理性能力を「自己肯定」する営みだと言えます。

ギャングストーキングという行為は、立ち止まってよく考えれば美しくも崇高でもありません。

にもかかわらず安易に人々が悪しき風潮に流されて犯罪に加担してしまうことの背景には、自己肯定的美意識の毀損状態があると予想されます。
それゆえ、 襲い来る集団的雰囲気に対峙する上で道徳的判断に代わる美意識の有効性を本研究が明らかにし、そして人々が実際に本来の美意識を取り戻すなら、
結果としてギャングストーキングの蔓延を抑止する効果が期待できます。