「都会風を吹かさないように」「多くの人から品定めされる」――。移住者向けの「暮らしの七か条」を公表した福井県池田町で、県外からの移住者の町議が2人に増えた。うち1人は新顔。「七か条」は移住者に長く町で暮らしてもらう方策を提言の形でまとめたものだが、ネット上では波紋を呼んだ。「移住議員」は町にどんな風をもたらすのか。

 池田町議選(定数8)は18日告示され、8人が届け出た。定数を超えなかったため、全員の無投票当選が決まった。

 新顔で当選した清水龍司さん(37)は県外移住者の一人だ。「みなさんの意見をしっかり聞いて、町に届けていきたい」。うっすらと涙を浮かべ、支持者に感謝を述べた。2015年、和歌山県新宮市から町に移住した。前回選挙で落選し、2度目の挑戦だった。

 町の人口は2320人(2月現在)、高齢化率は昨年9月末で45%を超える。典型的な過疎地で、雪国の県内でも有数の豪雪地帯だ。

 人口減が課題で、町は空き家の紹介や公営住宅の整備、就労支援などを進めてきた。IターンやUターンなどの移住者を積極的に受け入れるためで、年約20人が移住しているという。

 移住者が増えるにつれ、元々の町民の間に戸惑いが広がった。地区の掃除や草刈りに参加しない人が出てきたという。後悔や誤解からのトラブルを防ぎたい――。区長会が町に相談し、移住者向けに「池田暮らしの七か条」を作った。今年1月の町の広報誌にも掲載された。

 「七か条」は、地区の祭りや掃除などへの参加を求めるなど、濃い人間関係を楽しむ気持ちが大切と説く。条文には「都会風を吹かさないよう心掛けて」「多くの人々の注目と品定めがなされている」との文言もあり、テレビ番組やネット上では「上から目線」などと指摘された。

 条文などの文言案を考えたのは町。担当者は「移住者と地元住民のミスマッチを防ぐことが目的。(移住者を)排除するつもりは一切ありませんでしたが……」と弁明する。

 清水さんは「七か条」について「今日の選挙も地域の人にたくさん応援してもらった。温かい人ばかりで、自分の実感とかけ離れている」と言う。「新しい移住者と地元住民がより良い関係を築けるようにサポートしていきたい」と語った。(田中祐也)

朝日新聞 2023年4月19日 6時30分
https://www.asahi.com/articles/ASR4L622GR4KOXIE02R.html?iref=comtop_7_04