浄土宗光琳寺の住職・井上広法さんに話を聞きました。

「日本では火葬が一般的ですが、実は戦前くらいまでは土葬が主流でした。火葬はエネルギーを大量に必要とするため、昔は裕福な人しかできないことでした。
欧米やヨーロッパなどのキリスト教・イスラム教文化圏では、今でも土葬文化が強い。これは、神が降りてきたときに死者が復活すると信じられているからです。
一方で、仏教はより多様的で、どのような弔い方でも問題ありません。チベットでは鳥に屍を食べさせる鳥葬がありますし、日本でもかつて、遺体を舟に見立てて流す水葬もりました」。

しかし、日本で堆肥葬を考えたとき、課題となるのは宗教観ではなく倫理観だと、井上さんは話します。

「一見すると堆肥葬と土葬は、土に還るという点では似ています。しかし、堆肥葬は『肥料としてその土を有効活用する』という点で土葬と大きく異なります。
仮に、遺体を堆肥化した畑で野菜をつくったとして、その野菜を抵抗なく食べられるでしょうか? また、日本では他国に比べ祖先崇拝の意識が強く、
お墓自体が遺された人々の支えとなっている場合もあります。お墓がなくなることに違和感を感じる人もいるでしょう」。

堆肥葬に近い考え方として、墓石の代わりに木を植える「樹木葬」という葬送があるそう。樹木葬方式であれば、堆肥葬が日本でも浸透するかもしれないとのこと。

「最近、樹木葬が人気です。お骨は骨壺に入れて納骨するので、実際には木の養分にはなっていないのですが、ヨーロッパで実際に行われているように、
木の下に遺体を土葬すれば、日本でも堆肥葬的な考え方は成立すると思いますね」。