公明党が次期衆院選への危機感を強めている。国政選挙並みの態勢で臨んだ統一地方選は12人が落選し、集票力の衰えを印象付けた。この統一選で伸長した日本維新の会は、公明が大阪・兵庫で持つ衆院小選挙区6議席の奪取をうかがう。定数が増える都市部の小選挙区擁立に向けては自民党との不協和音が残ったままだ。

 「どうなっているんだ」。統一選後半戦の結果が判明した4月24日、公明内に激震が走った。東京都の練馬区議選で4人が落選。港、目黒、大田、杉並の各区などでも1人ずつ落とす想定外の「大量落選」となった。
 前半戦と合わせた12人落選は、現在の公明党となった1998年以降の統一選で最多。公明は強固な組織力と緻密な票読みを誇り、今回も「全員当選」を目標に掲げた。関係者は選挙後の党内の様子を「お通夜のようだ」と明かした。
 敗因の一つは組織力の弱まりだ。練馬区議選は候補全員が当選した4年前と同じ11人を立てたが、合計得票は3万5000票弱で、前回から約5000票減らした。支持母体の創価学会は会員の高齢化が進み、足腰が弱まっているとの指摘がかねてある。
 戦略ミスも災いした。同区議選は当落線上に公明候補7人が並び、うち4人が落選。党関係者は「候補を1人減らしていれば全員が当選した」と悔やんだ。
 維新の勢いが公明苦戦につながったとの見方も有力だ。山口那津男代表は、維新台頭を念頭に「既存の勢力が割を食った。わが党もあおりを受けて(当選に)届かない候補が出てしまった」と語った。全国政党化に向け、関西以外にも勢力を広げつつある維新が公明候補の順位を押し下げたとの分析だ。
 「練馬ショック」は次期衆院選の戦略にも影を落とす。選挙区「10増10減」に伴い定数5増となる東京都で公明が新たに擁立を目指すのが練馬区東部の東京28区のためだ。自民は公明に選挙区を渡すことに一貫して反対している。
 公明は既に衆院埼玉14区と愛知16区で新たな候補を発表済み。都市部で積極擁立の姿勢を崩さないのは、維新が公明との選挙協力「リセット」を宣言し、関西6議席を失いかねないことも背景にある。新たな選挙区開拓に活路を見いだそうとしている。
 公明の石井啓一幹事長は、統一選結果が自公調整に与える影響は「ない」と断言した。ただ、公明内には「自民党に格好の反論材料を与えた」(関係者)との悲観論も漂う。幹部は「党全体の力が落ちている」と認め、党勢立て直しが急務と訴えた。

時事通信 2023年05月01日07時08分
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