日本国憲法は3日、1947年の施行から76年を迎えた。憲法改正に前向きな自民、公明、日本維新の会、国民民主の「改憲4党」が衆参両院で3分の2議席を占める中、国会で改憲に向けた議論が徐々に進んでいる。だが、政治日程を見定めながら改憲発議、国民投票まで進めることは容易ではない。首相就任から1年半、「リベラル色」が強いと言われる岸田文雄首相が、改憲に踏み込むか否かが今後の焦点となる。

公明、自民の動きに苦言
 4月25日の夕方、東京都内のホテルの宴会場で、自民党憲法改正実現本部の会合が開かれた。岸田首相が到着すると、古屋圭司本部長はマイクを握り、昨年の首相の発言を紹介した。「1年前の会合で、『私はリベラルと言われているが、誰もなしえなかった憲法改正を自分の世代でしっかり実現したい』とはっきり言われた。改めて激励の言葉をいただきたい」

 古屋氏からマイクを受け取った首相は、「私の語ることはもうなくなってしまった」と苦笑したが、「(2021年の)総裁選で、任期中に憲法改正を実現したいと言って支持をいただいた。2回の国政選挙で公約の柱に掲げて勝った。憲法改正に対する思いはいささかも変化していない」と約70人の議員を前に強調した。

 岸田首相は7年8カ月にわたって首相を務めた安倍晋三氏を強く意識してきた。安倍氏亡き後も、同氏の支持基盤だった保守層や党内最大派閥の安倍派の取り込みに腐心している。

 安倍氏が目指した、防衛費の大幅増や相手国のミサイル発射拠点などをたたく反撃能力(敵基地攻撃能力)保有も決断した。ロシアのウクライナ侵攻が後押しした影響は大きいが、国民の間で反対論は広がらなかった。安倍氏や菅義偉前首相ほど政権運営が強引に見えないのは、リベラル色もいくらか寄与しているようだ。この点について、政権幹部が首相に「リベラルっていいですよね」と冗談めかして話しかけたが、首相は何も言葉を返さなかったという。

 首相が改憲に意欲を示すのも保守層を引き込む戦略の一環だが、その本音は見えない。首相周辺は「安倍氏ができなかったことをやろうとしているのではないか。憲法改正に道筋をつけることもあり得る」と話すが、党幹部は…(以下有料版で, 残り2801文字)

毎日新聞 2023/5/3 06:30(最終更新 5/3 06:30) 有料記事 3707文字
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