旧優生保護法(1948~96年、旧法)の下で不妊手術を強いられたのは憲法に違反するとして、宮城県の女性2人が国に計約7千万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が1日、仙台高裁であった。石栗正子裁判長は、請求を棄却した一審判決を支持し、控訴を棄却した。

 原告は、60代と70代の女性。うち1人が2018年1月に全国で初めて提訴したのを契機に各地の障害者らが声を上げ、全国12の地裁・支部に同種訴訟が起こされた。

 焦点は、不法行為から20年過ぎると賠償請求権が消える「除斥期間」。手術から20年以上過ぎているとして、当初は除斥期間を適用して請求を棄却する判決が続いたが、大阪高裁が昨年2月、除斥期間の適用を制限する判決を出して以降、国に賠償を命じる判決が相次ぎ、仙台高裁の判断が注目されていた。

 2019年5月の一審・仙台地裁判決は、旧法を違憲と認めたものの、除斥期間を適用し、損害賠償を請求する権利は失われたとして、原告側の請求を棄却した。

 控訴審で、原告側は被害を認識して提訴するのは難しかったとし、「正義・公平」に照らし、除斥期間をそのまま適用すべきではないと訴えた。

 一方、国側は、手術から提訴まで20年以上が過ぎており、損害賠償を請求する権利は消えていると反論。除斥期間の適用が「著しく正義・公平の理念に反するとは評価できない」としていた。

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〈旧優生保護法〉「不良な子孫の出生防止」を目的に1948年に成立。障害や病気がある人について、都道府県の審査会の決定があれば、本人の同意なく不妊手術をすることを認めた。厚生労働省によると、母体保護法に改正される96年までに約2万5千人が手術を受け、うち約1万6千人は本人の同意がなかった。被害者に一律320万円の一時金を支給する法律が2019年にできたが、認定件数は4月末時点で1047件にとどまっている。(根津弥)

朝日新聞 2023年6月1日 15時06分
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