つながらぬ動機、鑑定留置検討 性格「素直でない」「一言多い」―逮捕の陸自候補生・小銃発射1週間

 岐阜市の陸上自衛隊射撃場で自衛官候補生の男(18)が小銃を発砲し、隊員3人が死傷した事件は、21日で発生から1週間となる。調べに対し、男は3人や陸自への不満は述べておらず、供述した動機も論理の飛躍が見られるという。「注意されても、素直に聴かず聞き返した」と話す同僚もおり、陸自警務隊や岐阜県警は生活ぶりを聴くなどして慎重に背景を調べるほか、刑事責任能力の有無を調べる鑑定留置も検討している。

 死亡した八代航佑3等陸曹(25)は待機場所の「準備線」を監督する「交代係」、菊松安親1等陸曹(52)と重傷の3曹(25)は弾を管理して手渡す「弾薬係」だった。いずれも男と直接の指導関係になく、接点は少なかったとみられる。
 14日午前9時10分ごろ、準備線にいた男は、規則に反して射撃位置に入る前に小銃に弾倉を装填(そうてん)し、「動くな」と叫んだ。前方にいた八代3曹が制止を図ったが、脇腹を1発撃たれた。男はさらに後方の弾薬置き場に向き直って発砲し、2発が菊松1曹に、1発が3曹に命中した。男は取り押さえられた際も数発発射。弾倉にはまだ銃弾が残っていたという。
 男は「脚を狙った。殺すつもりはなかった」と八代3曹への殺意を否認。残り2人については「弾薬係の人」などと呼び、名前も知らない様子で個人への恨みや不満は述べていない。男は発砲しながら弾薬置き場に近づいており、「銃弾を奪いたかった」という趣旨の供述もしたという。当初は取り調べに応じていたが、その後黙秘に転じている。
 男は自衛隊にあこがれていたといい、元同級生によると、高校在学中は何度も駐屯地見学などに参加。性格は明るいが、小中学校時代は教師の注意に納得できないと激高する一面もあったという。
 防衛省関係者によると、入隊前の適性検査は通過したが、「むら気がある」などと評価された。入隊後も大きな素行不良はなかったものの、指導を受けた際に「どうして必要なのか」と聞き返すなど、「一言多い」傾向は指摘されていたという。
 ただ、隊内で寝食を共にする担当教官との交換日誌や面談では、異常は検知されなかった。銃弾を得るのが目的だったとしても、「奪って何がしたかったのか」という疑問が残る。供述だけでは経緯が説明しきれないことから、警務隊などは鑑定で事件に至る詳しい精神状態を明らかにする方針だ。

時事通信 2023年06月21日07時06分
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