世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が新たな研修施設を建設予定の東京都多摩市永山の土地で3日、既存の建物の解体工事が始まった。教団進出に反対する市民団体のメンバーらは工事現場前で横断幕を掲げるなどして、着工に抗議した。市民団体が5月末から開始した建設反対の署名活動では約1カ月間で、署名用紙で4000人分、ネットで約4万人分が集まっている。(宮本隆康)

 解体工事の工期は来年1月まで。その後の新たな施設の建設について、教団は「解散請求についての国の動向を見ながら検討する」としている。
 新施設の建設予定地は、教団が昨年4月に取得した多摩市永山の土地約6300平方メートル。市に対する教団の説明では、新施設は5階建て延べ約9000平方メートルの既存の建物と同規模で、400人程度が宿泊できる計画。教団広報によると、東日本の研修施設では最大規模になるという。
 予定地では3日午前、市民団体のメンバー約50人が監視する中、工事業者が資機材などを搬入した。

 阿部裕行市長は「市としては遺憾。新たな建物建設のないよう強く求める」とのコメントを発表。市は、国による解散命令が出されるかが確定するまで、建物建設を着工しないよう求める書面を教団に送った。
 教団の広報担当者は取材に対し「ゆくゆくは住民への説明の機会も考えている」と話した。
 統一教会問題に詳しいジャーナリストの鈴木エイトさんは「着工見送りの申し入れに法的根拠はなくても意思表示は大切。一方で、2世信者らが来ても偏見の目で見ないで、分断にならないような視点をもってほしい」と話している。

 教団の進出計画は今年3月、土地取得が市議会で取り上げられたことで表面化。4月、教団の進出に反対する市民団体「統一教会はNO!多摩市民連絡会」が発足した。その後、6月に教団の新施設建設計画が判明。市長らが着工の見送りを教団に申し入れていた。建設予定地は国士舘大学キャンパスと都立高校に隣接しており、若者への勧誘などが不安視されている。
◆実勢価格9憶4000万円の土地を一括購入に驚き
 教団が新施設の建設を予定している土地は、川崎市との市境に近い幹線道路沿いで、以前は東京都八王子市の菓子会社の施設だった。多摩市内の不動産業者によると、国税庁による路線価を基に計算すると、土地の実勢価格は9億4000万円ほど。実際の取得価格は明らかではないが、進出に反対する市民からは「信者の高額献金が原資なのではないか」との声が上がっている。
 土地の取得価格について教団の広報担当者は「公表していない」と回答。一方で、土地に抵当権はなく即金で一括購入したことを認めた。
 不動産業者は、教団の新施設建設予定地について「駅から遠いうえ、広すぎて高額になるため需要は多くない」と指摘。その上で「一括払いとは…」と驚く。
 阿部市長は、教団進出を問題視する理由として「土地取得や活動拠点の構築には、献金名目で被害を受けた人たちの財産も原資に含まれる可能性がある」と指摘している。
 市民連絡会共同代表の永井栄俊さん(76)は「借金なしで土地を買っただけでなく、解体、施設の建設費もかかる。その資金力は普通じゃない。信者から巻き上げたのではないのか」と語った。

東京新聞 2023年7月4日 06時00分
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