日豪など環太平洋連携協定(TPP)締約国は16日、ニュージーランド(NZ)で開く閣僚級会合で英国の加入を認めることに正式合意する。2018年12月のTPP発効後、加入承認は初めて。TPP経済圏は、アジア太平洋地域から欧州へ拡大する。これに先立ち、12日には署名11カ国の中で唯一、批准に時間がかかっていたブルネイで協定が発効。TPPは英国が加わる12カ国の枠組みとして新たな段階に移る。
 現在のTPPは、米国の離脱後、残り11カ国で18年にまとめた経済連携協定(EPA)。多くの物品の関税撤廃に加え、電子商取引、知的財産など幅広い分野で高いレベルの通商ルールを定める。
 英国は21年2月にTPP加入を申請した。20年に欧州連合(EU)を離脱したため、高い成長が見込まれるアジア太平洋地域との連携強化で経済の底上げを図る狙いだ。TPPメンバーは21年6月に加入条件の交渉を始め、交渉は今年3月に実質妥結していた。今後、各国の国内手続きを経て英国は正式に合流する。
 英国の加入で、TPP参加国の名目GDP(国内総生産)の合計額は約27%増の約15兆ドルに拡大、世界のGDPに占める割合も約12%から約15%に高まる。
 日本を含むTPPメンバーの多くは、既に英国と2国間でEPAなどを締結している。このため、追加的な経済効果は小さいとの見方もあるが、日本のTPP交渉で首席交渉官を務めた鶴岡公二氏は「関税撤廃率も非常に高く、民間企業には2国間協定より有利だ」と活用を促す。日本の農産品では、英国輸出に1キロ当たり約22円かかっていた精米の関税撤廃が決定しており、輸出拡大が期待される。
 閣僚級会合では、英国に続いて加入を要請してきた国・地域への対応も協議する。既に申請していた中国、台湾、エクアドル、コスタリカ、ウルグアイに加え、今月7日にはロシアから侵攻を受けているウクライナが加入を申請したことが公表された。

時事通信 2023年07月08日20時32分
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