宮城県 栗原市若柳小で6日、軽トラックが侵入して児童4人をはねる事件が起き、安全であるべき学校の危機管理の在り方が改めて問われている。従来は不審者が徒歩で侵入する対策が中心で、車に対する想定は十分でなかった。専門家は「出入り口の管理を厳格にする必要性を再確認するべきだ」と指摘する。

 軽トラックは同校北側の通用口から侵入し、児童をはねた。現場にいた教員によると、エンジン音に気付かないくらいゆっくりしたスピードだった。児童4人はいずれも軽傷だったが、関係者は「猛スピードだったら大惨事」と振り返る。

 各学校は学校保健安全法に基づき、危機管理マニュアルの策定が義務付けられている。文科省の作成手引には、不審者対応がフローチャート付きで詳細に記載されているが、車両侵入対策は記されていない。

 若柳小の通用口は、保護者の送迎や物品の搬入などで常に開放されている状態だった。千田知幸校長は「車の侵入は想定できていなかった」と説明する。立正大の小宮信夫教授(犯罪学)は「自動車は多くの人が所持し、悪用すれば簡単に大勢の人に危害を加えられる。車の侵入対策は必要不可欠だ」と強調する。

 宮城県内では、登米市豊里町の認定こども園で2021年、刃物を持った男が侵入した事件を受け、不審者対策が各地で強化されている。東京学芸大の渡辺正樹名誉教授(安全教育学)は「不審者対策と同様、校門の施錠などで車を校内に入らせないという基本の徹底が大切になる」と言う。
 「門が閉まっていたら、入っていなかったかもしれない」。01年の大阪教育大付属池田小の校内児童殺傷事件で、犯人はこう供述したとされる。犯人は同校の正門が閉まっていたため、開いていた自動車専用門から徒歩で校内に侵入した。
 学校の安全性を巡る石巻市大川小の津波訴訟で原告代理人を務めた吉岡和弘弁護士(仙台弁護士会)は「今回、学校現場で出入り口を管理するという基本がおろそかになっていた。学校は『絶対に安全』でなければならない。改めて全国の学校や自治体は防犯対策を講じるべきだ」と訴える。

容疑者を送検
 宮城県栗原市若柳小の軽トラック侵入事件で、宮城県警若柳署は8日、殺人未遂容疑で逮捕した栗原市若柳下畑岡、職業不詳の男(34)を送検した。

 送検容疑は6日午後3時ごろ、学校敷地内で児童4人を軽トラックではね、殺害しようとした疑い。逮捕時は児童3人への容疑だったが、帰宅後に被害を訴えた4年生の女子も加えた。

河北新報 2023年7月9日 6:00
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