不正の発覚で経営破綻に追い込まれるコンプライアンス(法令順守)違反倒産の件数が、令和5年度は過去最多のペースで増加していることが12日、分かった。新型コロナウイルス禍の手厚い支援が終了し資金繰りに苦慮する企業が増える中、過去の粉飾決算などが明るみに出る事例が多い。コロナ対策の実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)は今夏に返済開始のピークを迎え、倒産増に拍車がかかりそうだ。

帝国データバンクによると、架空の売り上げ計上などの「粉飾」、過積載や産地偽装を含む「業法違反」、「脱税」といった不正の発覚で倒産に追い込まれた案件は、今年4~7月で110件。通年で過去最多となった4年度(300件)の同時期に比べて既に30件多く、「今年も過去最多を更新する可能性が高い」(担当者)という。
背景にあるのは企業の資金繰り悪化だ。コロナ禍ではゼロゼロ融資などの支援に支えられ倒産件数全体が抑制され、企業の不正も表面化しづらい状況だった。ただ、支援の終了で借入金の返済が難しくなり、金融機関に追加支援を申し入れた際などに不適切な会計処理が発覚することが多い。

7月には、ベアリング(軸受け)大手NTNの販売代理店で機械部品商社の堀正工業(東京)が粉飾決算の発覚で経営破綻した。地方銀行など40社超が融資し、負債総額は約280億円に上る。

ゼロゼロ融資の返済を信用保証協会に肩代わりさせている〝倒産予備軍〟も多く、帝国データ担当者は「経営環境の悪化で、存続のため不正に手を染める企業は今後も増えるだろう」と懸念を強める。
https://www.sankei.com/article/20230812-4RODBGR4G5LUPFRNDOLH7IV53U/