熊本県内で主に活動している136の宗教法人が2021年度、宗教法人法で県への提出が義務付けられている報告書類を提出していなかったことが2日、県への取材で分かった。事実上の休眠状態の法人も多く含まれているとみられ、県はこの136法人を中心に実態調査に乗り出した。

 宗教法人の活動には税制上の優遇措置があり、休眠状態の法人は脱税などの不正行為の温床になるとの指摘もある。こうした声を踏まえて、国は今年3月、休眠状態にある法人の整理に速やかに着手するよう各都道府県に通知していた。

 熊本県が所管しているのは、主に県内だけで活動する宗教法人。宗教法人法は、代表者らの役員名簿、土地や建物の財産目録といった「事務所備[そなえ]付け書類」の写しを毎年、会計年度終了後4カ月以内に所管する国か都道府県に提出しなければならないと規定。提出を怠ったり、虚偽記載したりした場合は過料の罰則もある。

 県私学振興課によると、県が直近で精査できている21年度は、県内で提出義務のある2812法人のうち5%に当たる136法人が未提出だった。内訳は寺院などの仏教系が75法人、神社などの神道系が60法人、その他が1法人。代表者と連絡が取れず、督促が難しい法人も多数あるという。

 未提出の136法人について、県は登記簿を取得するなどして実態把握に着手。このうち約100法人が活動の実態がない「不活動宗教法人」の疑いがあるとみて、今年7月から法人の所在地とされる現地での調査を本格的に始めた。

 近隣住民への聞き取りなどを通じて活動実態を把握する構えで、県私学振興課の枝國智一課長は「実態調査を通じて不正行為抑止につなげたい」としている。(小山智史)

 ◆宗教法人 教義を広めるとともに、儀式を執り行い、信者を教化、育成することを主な目的とし、都道府県知事もしくは文部科学相の認証を得て法人格を取得した団体。法人税法で「公益法人等」に位置付けられ、税制上、一般法人と異なる扱いを受ける。寄付やお布施、さい銭といった収入には課税されず、宗教活動をするための敷地や建物も固定資産税の課税対象外。営利目的の物品販売や不動産の貸与といった34の収益事業には法人税が課されるが、最高税率は一般企業の23・2%に対し、19・0%に軽減されている。

熊本日日新聞 | 2023年9月3日 08:26
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