中古車販売大手ビッグモーターの店舗周辺で街路樹が枯れるなどした問題で、捜査機関が本社の家宅捜索に踏み切った。除草剤などの散布が組織的に行われていた疑いがあるためだ。社内で「環境整備点検」と呼ばれた制度では、本社の役職員らが各店舗を巡回。人事考課にも影響したという。環境整備の手法を同社に伝えた経営コンサルティング会社は産経新聞の取材に「趣旨が誤解されて運用された」と説明する。

ビッグモーターによると、環境整備は創業者で前社長の兼重宏行氏が「お客さまサービスや地域の人々に気持ちよく利用していただく」目的で導入。人材育成の意味もあった。同社は「人事評価の一つの判断材料として活用したことは事実」と認め、宏行氏の長男で前副社長の宏一氏が平成30年以降、環境整備を重視していたと明かした。

元社員の男性によると、環境整備では毎月1回、本部の役員らが各店舗を巡回。清掃が行き届いていない部分があると、「難癖をつけられ、降格人事のネタ(材料)になった」ため、従業員は清掃を徹底した。

同社は川崎市に対し、川崎店前の街路樹の伐採は本社の「環境整備推進委員」からの指示があったとの趣旨の説明をしている。30年以降は特に、環境整備による点検が先鋭化した可能性もある。

ビッグモーターが環境整備を導入する契機となったのが、東京都内のコンサル会社が主催するセミナーだった。宏行氏の経営思想が書かれた「経営計画書」には、幹部に部下の「生殺与奪権」を与えるなどとも明記されていた。各店舗の朝礼では経営計画書を読み上げる〝儀式〟が行われた。

環境整備についてコンサル会社は「整理・整頓・清潔を徹底することで無駄に気づき、業務の見える化や仕事の効率化が図られ、改善、習慣化まで整える」と説明する。

結果的にその趣旨はゆがめられ、「清掃の域を越え、公共物を棄損(きそん)させてしまった」(ビッグモーター)ことになった。(大竹直樹)

産経ニュース
2023/9/15 20:43
https://www.sankei.com/article/20230915-FAXR6REK7RI6RIYCNFDRXFXTB4/