9月27日に首相官邸で開催した「新しい資本主義実現会議」で岸田氏は今後の施策について、このように語っている。

「第1に賃上げ税制の減税措置の強化を図る。第2に中小・小規模企業の賃金引上げのため省人化・省力化投資への支援を実施する。地方においても賃上げが広がるよう工場などの新設を支援する。第3に最低賃金の上昇率や春闘の妥結額を基礎に価格交渉を行うなど労務費転嫁の指針を年内に公表する。第4に非正規労働者と正規労働者の同一労働・同一賃金制について企業に指導を行うとともに、非正規労働者に対するリスキリング支援を開始する。第5に資産運用立国については年内に政策プランを策定する」

 ここで「おや?」と思った人は少なくないだろう。制度設計の詳細は今後決まっていくのだろうが、その中心は「企業向け」に偏っているからだ。首相は賃上げ税制の減税制度の強化、国内投資の促進や特許所得に対する減税制度の創設、ストックオプションの減税措置の充実という「3つの減税政策」を進める意向を示したものの、それらは物価高に苦しむ国民が望む「今日を生き抜くため」の施策とは言えない。

物価高対策としては、高騰するガソリン価格や電気・ガス料金の負担軽減策が机上にのるものの、国土強靱化や人口減少対策などが入ることには与党内からも「なんで今やるの?」(自民党中堅議員)との声が漏れるほどだ。経団連は9月11日に発表した来年度税制改正に関する提言で、法人税減税を訴えるとともに、将来の消費税率引き上げは「有力な選択肢の一つ」とした。ネット上には「増税メガネ」と岸田首相を揶揄する書き込みも目立つが、財務省寄りとみられている首相と財界が歩調を合わせているように映る。

 首相が経済成長の成果である「税収増を国民に還元する」と表明しておきながら、10月末をメドにまとまる経済対策は企業向けが中心で、国民生活を支える策としては住民税の非課税世帯に限定した低所得者向け給付措置が軸になる見込みだ。

 昨年末に決定された防衛費大幅増に伴う増税プランに加え、サラリーマンの退職金課税見直しや社会保険料アップが議論される中での限定支援策には「物価上昇の影響を受けているのは全国民なのに、バカにしているのかと感じる」(千葉県在住の30代男性会社員)といった怨嗟の声も渦巻く。

賃金上昇が物価上昇に追いつかず、多くの国民がギリギリの生活を強いられている
https://news.yahoo.co.jp/articles/ee07ca3883e365346ee261479cbf4dbd25119e38?page=1