10年前に比べ、住民登録する外国人が2倍以上かつ100人以上増えた自治体は280市町村(約16%)に上ることが、毎日新聞の集計で判明した。増加幅が最も大きかったのは北海道京極町(11・8倍)で、香川県琴平町(11・4倍)が続いた。人口1万人以下の小規模な自治体でも技能実習生らの増加が進み、外国人が全国各地の産業を支える実態が浮かんだ。増加する外国人との共生も急務だ。

 総務省の住民基本台帳調査から、今年1月1日時点と2013年3月末時点の外国人人口を比較。1人から数十人に増えたなど極端な事例を除外するため、増加数100人以上の市区町村に絞って分析した。このうち2倍以上に増えたのは、1741市区町村のうち280市町村で約16%を占めた。

 全国で増加幅が最も大きかった京極町は、ジャガイモやニンジン、小麦の産地で10人から118人に増えた。地元の農協「JAようてい」は特定技能のベトナム人ら35人を雇用。施設や機械の管理の他、農家の手伝いなども担う。担当者は「日本人は集まらないから本当に助かる」と明かす。町によると、農業以外では食品加工や福祉分野で働いている。

外国人増加幅が大きい市町村
 続く琴平町では17人から194人に増え、半数が技能実習生だ。町は「こんぴらさん」と親しまれる神社・金刀比羅宮(ことひらぐう)を目当てに毎年200万人前後が訪れる観光地。ベトナムやインドネシアから来る技能実習生らが参道に並ぶ旅館やホテルの客室清掃などを担う。地元の清掃業者は「コロナ下で離職した日本人が戻ってこないので、外国人を雇うようになった。老舗旅館でも接客や調理、布団のセット、清掃まで外国人がいて初めて成り立っている」と指摘する。

 増加幅の上位20市町村のうち半数を占めたのが北海道だ。15年に全国初の公立日本語学校を建設した東川町には、タイやベトナムなどから計517人が来日し、9・9倍に増えた。リゾート地として知られる留寿都村(9倍)や占冠村(5・7倍)は、インドネシアやネパールから来た人材が中心だ。食肉加工の清水町(6・7倍)、酪農の上士幌町(5・1倍)なども挙がる。

 福岡県久山町が8・7倍に増えるなど、九州地方の自治体も目立った。久山町では大手食品メーカーのだし製造工場でベトナムやミャンマーからの技能実習生が働く。食肉加工が盛んな鹿児島県いちき串木野市(7・3倍)や宮崎県川南町(6・6倍)でも受け入れが進む。


 増加幅が大きい上位20市町村で人口1万人以下は11町村。小規模な自治体で外国人の受け入れが加速しているとみられる。

 1月1日時点の外国人は全国で299万3839人。10年前の198万200人から約1・5倍に増えている。一方、外国人が減る自治体もあった。

 社会人口学者で国立社会保障・人口問題研究所の是川夕国際関係部長は「外国人は1990年代以降、3大都市圏や東海・北関東の工業都市で増加したが、10年代以降は全国的に人手不足が進んだ結果、ベトナムからの技能実習生が農業や製造業など地方の主要産業を下支えするようになった。この傾向はコロナ後も続き、ベトナムに加え、インドネシアやミャンマー、フィリピンからの流入が増えている」と指摘した。【国本愛、奥山はるな、宮川佐知子】

技能実習と特定技能
 いずれも外国人の在留資格。政府の有識者会議は今年4月、技能実習を見直し、新たな制度を創設して特定技能と一体的に運用するよう求めた。技能実習は途上国からの外国人が最長5年、日本で働きながら技能を習得する制度で、1993年に創設。2023年6月末時点で約36万人いる。特定技能は人手不足が深刻な特定の産業分野に即戦力の外国人労働者を受け入れるため、19年に設けられた制度。23年6月末現在、1号は約17万3000人、2号は12人。

毎日新聞 2023/10/24 05:30(最終更新 10/24 06:55) 1559文字
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